COP28で産油国が議長に 「化石燃料との決別」が宣言された交渉の舞台裏「化石燃料の段階的廃止」の行方は(4/4 ページ)

» 2024年01月22日 08時30分 公開
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日本にとっての「宿題」

 COPにおいて化石燃料との決別が宣言されたことは大きな意義を持つが、もちろん、それだけで世界が変わるわけではない。

 そもそも、上述した通り、グローバル・ストックテイクの真価は、世界全体での結論を出した上で、それを各国の削減目標およびその他の対策に反映させていくことにある。世界的な結論を、各国の文脈に落とし込んでいく作業が必要なのである。

 パリ協定では、締約国は5年ごとに排出量削減目標を含む国別目標を提出することになっている。次回の締切は2025年。しかし、過去の決定で、削減目標の最初の案は25年のCOPの9〜12カ月前に提出することになっている。つまり、24年12月〜25年3月のどこかで出すことになる。CO2の削減目標は、その国のエネルギー政策にも深くかかわるため、その策定にはそれなりの期間と労力を要するし、民主的なプロセスで決めようとすればなおさらだ。しかし、日本はそもそもそのプロセス自体を始められていない。

 現在、ほとんどの国は30年までの排出量削減目標をかかげているが、次に提出する目標は35年を目指した目標になる(日本も含め、一部の国は40年を射程においた目標を掲げる可能性もある)。

 グローバル・ストックテイクは、先の「化石燃料」に関する文言に加えて、IPCCの第6次評価報告書が示した必要な削減量についても「認識する」という形で言及している。具体的には「気温上昇を1.5℃に抑えていくためには、世界の温室効果ガス排出量を30年までに19年比で43%削減し、35年までには同60%削減することが必要である」とされている。

 化石燃料からの決別の方向性を打ち出すような具体的なエネルギー政策と、上記のような削減水準が世界全体で必要であるという「認識」が、きちんと次期35年目標に反映できるか。COP28での合意は、世界全体の認識が大きくシフトしたことを示したという意味で歴史的であったとはいえ、その実行につなげていくことが、日本も含め多くの国々の課題として課されている。

著者紹介:山岸尚之(ヤマギシナオユキ)

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立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より気候エネルギー・海洋水産室長(現・自然保護室長)。


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