最近よく、生物多様性や自然資本という言葉を耳にするようになりました。これらの概念自体は決して新しいものではありませんが、気候変動の次の重要テーマとして国際目標が定められるなど、生物多様性に関する議論は加速しており、この1〜2年で企業による生物多様性や自然資本への関心が急速に高まっています。
2022年12月には、「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」で「ポスト2020生物多様性枠組」を採択し、30年までに地球上の陸域・海域・内陸水域の30%を保護することが合意されました。
また、22年11月の「国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)」でも生物多様性について議論されるなど、脱炭素を中心とする気候変動問題と、生物多様性の保全を目指す環境問題は強く結びついています。
生物多様性の議論にビジネス界を巻き込み後押しする仕組みとして、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が自然関連のリスク・機会の開示フレームワークを開発しており、複数回のドラフトβ版の公開を経て、23年9月の最終提言の公表を目指しています。TNFDフレームワークは、世界の金融資本の流れをネイチャーポジティブな成果に方向付ける可能性があります。脱炭素分野で先行する目標設定・行動・情報開示などを企業に求める動きが、これから自然分野においても進展すると見込まれています。
その中で特に影響が出る業種としては、農林水産業、食品・飲料、鉱業、アパレルなどが考えられます。ビジネスと生物多様性を両立させるために企業は何から取り組むべきでしょうか? 10年以上前から生物多様性の取り組みや開示で成果を出している、キリンホールディングスを例に挙げながら解説します。
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