レゴランドの炎上、根本的にどこが間違っていた?事例から学ぶ(2/2 ページ)

» 2024年01月23日 08時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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システム障害で株を上げた東証

 2020年10月1日に発生した東京証券取引所(東証)のシステム障害に関する記者会見は、その対応が非常に高く評価された事例である。この記者会見では、東証のトップがスピーディーに現場での直接会見に臨み、問題の重要性を認識し、責任を持って対応したことが評価された。

東証の会見から学ぶべきは

 宮原幸一郎元社長が自ら矢面に立ち、関係役員はサポートとして記者からの質問に回答していた。会見では障害の発生原因や影響、対策に関する事実を丁寧に説明しており、問題の認識と解決への取り組みを明確に示したことで、株式市場における株価下落や混乱の拡大防止に寄与した。

 会見では「ノーコメント」を避け、全ての質問に対して現時点で分かっている事実に基づいて回答していた。こうした対応は隠蔽(いんぺい)やごまかしの印象を与えず、透明性を高める印象を与えた。

 とりわけ同社の“株”をあげた要因は、従業員や下請け事業者への責任転嫁を避け、あくまで東証自身の責任であるというスタンスを明確に示したことだ。問題発生に対する責任を全面的に認めた点にある。

 その結果、最終的に宮原元社長はシステム障害の責任を取って社長を辞任することになるが、上記のように完璧といってもいい危機管理対応が評価されていたこともあり、当時は同氏の辞任をむしろ惜しむ声の方が大きいほどだった。

 なお、宮原氏はその後東証のグループ会社の社長を歴任したのち、22年には東京証券取引所の執行役に復帰している。東証の記者会見は、各社ニュースサイトのYouTubeチャンネルがノーカットで公開している。適切な危機管理とリスク対応の金字塔としてぜひ閲覧しておきたい教材だ。

 「ピンチはチャンス」という通り、危機が訪れた際に適切に対処できれば、世間の信頼を失うことを防ぎ、場合によっては評判を向上させることすら可能である。

 レゴランドジャパンの例では、社長の対応が炎上を招く原因となったものの、基本的な姿勢は間違いではなく、伝え方の観点で不適切な面があったといえる。

 具体的に挙げるならば、速やかかつ誠実な謝罪、内部調査の経緯や再発防止策の公表、関係者との継続的かつ丁寧なコミュニケーション、そして危機管理に関するマニュアルの整備という観点で、改善できる部分がレゴランド側にあった。

 SNS発の炎上の火種は、取り扱いを誤るとブランドイメージを大きく毀損(きそん)しうる。「明日は我が身」の姿勢で日々臨みたい。

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