新しい首相が決まると必ず私のもとに寄せられる質問は、「新しい首相の下で日本経済はどうなるのか」「どの企業や産業に追い風が吹くのか」というものだ。2021年10月、岸田文雄氏が首相に就任した際も同様の質問が来たが、私は「財政と金融のダブル引き締めが不安だ」と語った記憶がある。
21年はコロナ禍の真っただ中であり、翌年2月にはロシアがウクライナへ侵攻し、世界的なインフレも生じたことから、私の不安は杞憂(きゆう)に終わっていた。
しかし、昨年5月に新型コロナウイルスが5類感染症に移行されたことが象徴するようにコロナ禍も落ち着き、世界的なインフレも沈静化してくると、徐々に当初の不安の芽が少しずつ顕在化してきたのだ。
日本銀行が今年1月22、23日に開いた金融政策決定会合では、金融政策については現状維持の判断を下したが、31日に公表された「主な意見」をみてみると、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつあると考えられる」という意見に代表されるように、今後の物価と賃金のデータ次第では早期に金融政策を正常化していく方向性が示されていた。
具体的にはマイナス金利の解除だけでなく、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)やETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産投信)の買い入れなど、一連の緩和策についても見直すことを検討するとしている。マイナス金利を解除する程度であれば大きな利上げ幅にはならないとの指摘もあるが、外的要因で引き起こされたコストプッシュインフレ下において、金融緩和の解除を急ぐことに大きな意義があるとは思えない。
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