「遺憾である」「誤解を招いた」などと言わないために――企業を守る「炎上対応3ステップ」働き方の「今」を知る(2/2 ページ)

» 2024年02月15日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]
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3.積極的な情報開示

 何より重要なのが、この「情報開示姿勢」である。批判者やマスメディアが関心を抱く事項に対して先手を打って答えることで、「真摯な対応がなされた」と認識されることが望ましい。具体的には、以下について解説できることが望ましい。

  • 「何が起こったのか?」(確認できた事実を伝える)
  • 「なぜそれが起こったのか?」(原因を究明した結果を伝える)
  • 「どこに責任があるのか?」(責任の所在を明らかにする)
  • 「損害・損失は?」(損害・損失を明らかにし、講じている拡大防止措置を伝える)
  • 「今後の見込みは?」(再発防止のための取り組みを伝える)

 たとえネガティブな情報であっても、出し惜しみは新たな疑惑と不信感を生みだすだけだ。必要な情報か否か、判断するのはこの場合あくまで受け手側である。また事態の進展に伴って情報は常に変化していくものなので、都度アップデートし、常に最新版の情報を基に判断、行動していくべきである。

画像提供:ゲッティイメージズ

 最後に、炎上トラブルを発生させないようにするためには、組織として「コンプライアンスを徹底する」と決め、経営陣と上層部が日々、情報発信と行動で体現していくことが肝要である。

 その際は「不祥事や事故を起こしてはならない」と締め付けるのではなく、「いつでも不祥事や事故は起こり得るので、小さな違和感に気づき、『芽』の段階で未然に対処できるようにしよう」という雰囲気を醸成することだ。また問題が発覚した際は、担当者個人の責任に帰するのではなく、「芽」を生じさせた環境や風土を検証し、対策することが望ましい。そのうえでメンバー個々人が法律や組織内ルール、倫理的規範を意識して日々の業務を遂行していけばよいだろう。

 危機管理広報とは、こうした地道なプロセスの着実な積み重ねによって成し遂げられるものだ。個々人の判断と言動が組織のレピュテーション(評判)を左右するという自覚を持ち、誠実かつ丁寧に対応されることを祈念したい。そして不祥事は決して隠ぺいせず、問題の根源となる仕組み自体を見直し、変革していくための貴重な機会と捉えて、生かしていきたいものである。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。

 

著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。

11月22日に新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)発売。


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