「遺憾である」「誤解を招いた」などと言わないために――企業を守る「炎上対応3ステップ」働き方の「今」を知る(1/2 ページ)

» 2024年02月15日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

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 炎上が大きく広がってから事態収拾するために要する労力、お金、時間などはあまりに膨大であり、組織の貴重なリソースを激しく無駄にしてしまう。炎上対策の基本は「そもそも発生させない」こと。そのために予防体制を徹底するのが一番である。

画像提供:ゲッティイメージズ

 炎上が起こりかけたタイミングに共通する基本的な心構えは、次の3点に集約される。

1.落ち着いて現状把握
2.迅速対応(ただし拙速は避ける)
3.積極的な情報開示

 前回の記事では、2023年に起きた企業が関連する主な炎上をまとめ、その対応のどこに問題があったのかを言及した。本記事では、炎上の火種が生まれてしまった際、どのように対応するのがいいかを上記の3点に沿って具体的に解説する。

1.落ち着いて現状把握

 炎上対応は「発覚時には既にネガティブな情報が回収不可能な状況まで拡散している」という前提を認識し、「一刻も早く対応しないと、企業の存続危機にもなり得る非常事態である」との覚悟で迅速に事態収拾にあたることが求められる。

 まずは「今どんな批判がなされているのか」「どんな問題行動があったのか」「何が批判される要因なのか」「自分たちの側で法令や社会的規範に違反することはなかったか」などを早期に事実確認することが重要だ。事実と論調の把握ができ、判断材料がそろった段階で、今後の対応方針を策定し、対応内容を早急に検討することになる。

2.迅速対応(ただし拙速は避ける)

 炎上時における対応は、いわば「危機管理広報」であり、普段の前向きな広報とは勝手が違う。不用意な対応によって却って批判が高まり、そちらに対応のリソースを割かれてしまい、本来の問題解決に悪影響を及ぼしてしまってはどうしようもない。対応指針を4つ挙げておこう。

(1)「謝罪」から入る

 きっかけや内容がいかに自社にとって不本意なものであっても、「炎上」状態にあるということは、「不快に感じた人が一定割合存在する」ことに他ならない。釈明や反論の前にまずは「世の中をお騒がせしたことについて謝罪」することが基本となる。

 「自分たちは炎上による誹謗中傷の被害者なのに!」と思われるお気持ちは重々分かるのだが、「謝罪すること」は「法的な責任を認めること」とイコールではないので、身構える必要はない。まずは炎上という事態に至ってしまったことについて、「不適切な点があったと重く捉えており、真摯に対応していく」との姿勢を示すことが重要である。そうすれば批判者側でも「その後の釈明を聞こう」といったスタンスにもなるはずだ。

(2)すべての判断基準は「組織外」に置く

 危機管理広報の落とし穴となるキーワードがある。それは「この業界では当たり前」だ。

 組織内の不祥事やトラブル、失言が公になった際などに、トップや担当者が「業界の常識」を持ち込んで判断してしまったことで、対応に妥協や詰めの甘さが生じることはよくある。また「今まで誰も何も言わなかったのに、何を今さら文句を言われないといけないのだ」「社内的には問題ない」「この業界ならこの程度のことは、どこでもやっている」といった文句や言い訳は通用しない。「業界の常識」とか「暗黙の了解」といったものから極力距離を置き、これまでの経緯などを全く知らない一般の人がネガティブな情報を目にしたらどういった印象を持つか、イメージすることが重要だ。

(3)「組織の問題」として責任を負う姿勢を示す

 炎上の原因が自組織の従業員による不手際であれば、「従業員が軽率だった」などといった釈明で済ませてしまいたくなるかもしれない。しかし、それでは「他人事」「責任逃れ」と捉えられ、炎上が加速するリスクがある。あくまで、騒動を引き起こし、世の中を騒がせてしまった自組織の問題として、組織ぐるみで対応する姿勢を示すべきなのだ。

 その際、責任逃れだと捉えられるリスクのある表現として次のようなものが存在する。いずれもつい使ってしまいがちだが、炎上に油を注ぐ結果になりかねず、くれぐれもご法度として認識しておきたい。

・「不快な気持ちを抱かせたなら」

 既に炎上している時点で、不快な思いを抱いている人は一定割合存在しているため、他人事のように聞こえてしまい逆効果である。

・「遺憾である」

 勘違いしている人が多いようだが、「遺憾」とは「期待通りにならず不満だ」という意味であり、謝罪の場面で用いる言葉ではない。用語選択で更に批判が強まる展開になりかねない。

・「誤解を招いてしまった」

 「誤解されている」と感じているのはあくまで自分たち側であり、批判側は当然「誤解」とは思っていない。相手に対して「それは誤解です」と述べるのは、「あなたは間違っている」と言っているのも同然であり、炎上は鎮火どころか加速することになるだろう。

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