1986年に「からあげクン」を発売し、看板メニューに育ててきたローソンも、コロナ禍でスタンダードな唐揚げを発売した。そもそもからあげクンは名前こそ「唐揚げ」だが、サクッと感はなくふわふわなイメージがある。その意味で唐揚げとは別の商品であり、ブームで伸びたようなカリッとした唐揚げの必要性に迫られたのだろう。
そこで、21年11月に「鶏からもも」を発売、23年10月には温めなくてもおいしい点を訴求する「Lから」を発売している。現在では鶏からももの旨塩味、Lからをそれぞれ4個入り260円で販売している。1個当たり65円、カロリーは90キロカロリー前後であり、まとめて売ることでセブンやファミマよりもお得に提供できるのだろう。1月にはLからの「スパイスミックス」味と「ねぎとごま油」味を発売し、レパートリーを増やしている。
冒頭の通り、唐揚げ専門店ブームは終息に向かっているが、コンビニ唐揚げは好調だ。特にファミからは人気のようで、22年5月から23年12月にかけて累計販売個数は1億2500万食を超えたとしている。Lからも「満足度は高い」とローソンはアピールしており、先述したように新フレーバーも発売した。新商品の更新が早いコンビニでは、売れ行きが芳しくなければ早々と撤退していたはずである。現在でも販売が続くことから、少なくともかつての「コンビニドーナツ」のように売れない商品ではないようだ。
ちなみに「コンビニ唐揚げの普及が唐揚げ専門店の衰退をもたらした」という意見も聞かれるが、筆者はあまりそう思わない。専門店の唐揚げは、まとめ売りや弁当など食事目的が想定される。一方のコンビニ唐揚げは、紙製のパックや透明の容器に入れられることが多く、その場で消費する「スナック」のような位置付けだ。コンビニで買った唐揚げを家でご飯とあわせる行動はそれほど多くないのではないか。気軽に唐揚げを食べられることが、コンビニ唐揚げ定着の要因と考えられる。
唐揚げ専門店が衰退した背景には外食産業の回復もある。選択肢が増えた分、中食として唐揚げを選ぶことが少なくなった。また供給面では、鶏肉価格や食用油の高騰によって専門店側が利益を得られなくなったことも関係している。そういった意味で、コンビニ唐揚げは既存の唐揚げ市場を奪ったのではなく、スナックとしての新たな市場を開拓したといえる。
とはいえ実際に店舗へ寄ってみると欠品も目立ち、そもそも置いていない店舗もある。唐揚げではなく、ファミマであればファミチキ、セブンは揚げ鶏など、一回り大きい類似商品を見かけることの方が多いと感じる。そう考えると、コンビニ唐揚げは少なくとも現時点で「定番商品」には至っていないといえる。今後伸びるのか、それとも終焉を迎えるのか、見極めるにはもう少し時間がかかりそうだ。
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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