「日の丸半導体」復活の切り札なるか 専門家「日本が勝負する“最後の機会”」(2/3 ページ)

» 2024年02月28日 13時44分 公開
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 新興国経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストは「日本の半導体はかつて世界有数のシェアを誇ったが、1980年代の日米経済摩擦と、バブル崩壊後の『失われた30年』で国内半導体メーカーが衰退した。汎用品よりも付加価値の高い半導体が求められるなかで、今回は日本が勝負する“最後の機会”だといえる」と話す。

 アイオン構想が実現した場合、充電を意識せずスマホを使い続けられる▽空飛ぶ車や宇宙旅行への活用▽子供の送迎を遠隔で行える―といった「未来」の姿が紹介されている。防衛技術への活用も想定されているが、最大の狙いは次世代半導体技術と通信技術の覇権を確保することだ。

 経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「日本は半導体材料や製造装置には強いが、先端半導体の生産は経験がなく人材も乏しいため、TSMCを“先生”として誘致するのだろう。通信技術についても日本には5G(第5世代通信)技術があるが、世界の通信規格を決める標準化会議などでの政治力が問われている」と指摘する。

 米国と中国の「半導体戦争」も激化するばかりだ。

 米国が対中半導体規制を強化するなか、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、早ければ年内にも中国の半導体各社が次世代スマートフォン向け半導体を生産する見通しだと報じた。

 一方、日本など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は、半導体の供給網強化に関する協定を発効し、「脱中国」の流れもみえる。

 西濱氏は「中国は半導体の材料などの精錬技術やシェアを有する上、汎用品は国内で製造できる。製造装置に関する規制を受けても、欧州などから輸入するという抜け穴を駆使しているもようだが、先端半導体をどのレベルまで内製化できるのかは不透明だ。一方、日本の半導体産業は、海外と協業しつつ世界のニーズに結び付けていけるかが重要だ」と話す。

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