ここまで紹介したようにDXを進めてきたすかいらーくHDだが、本格的なDX投資を行ったのは22年のことだった。
配膳ロボットに関して、店内オペレーションとロボットの性能を知り尽くした17人のインストラクターが各店舗を周り、ロボットの導線などの運用方針を決めたという。その後、グループ全体の7割に当たる約2100店舗に対し、3000台の配膳ロボットを22年末までに導入した。ロボットの運用はやや殺風景な印象もあるが、可愛さを意識した猫の表情が理由なのか、利用者アンケートでは肯定的な意見が多かったようだ。
セルフレジも同様に、22年度から本格展開を進め、グループ全店の4分の1にあたる約800店に導入を開始した。ピーク時に会計が集中する店舗を主な対象としており、スタッフが会計業務に手を取られないようにすることが目的とみられる。
気になるDXの効果だが、すかいらーくHDによると23年12月期第3四半期までの累計で、20億円規模の業務改善効果があったという。業績を振り返ると、今期は好調でも20年度と22年度は赤字になるなどコロナ禍では業績が悪化した。やはりDXは収益率の改善が主目的だろう。また、23年春までの深夜営業の中止は感染対策の他にも人手不足が原因だ。慢性的な人手不足への対応策としてもDXは欠かせなかったのだろう。
次にサイゼリヤについて見てみよう。サイゼリヤは感染対策の一環として、20年7月からメニューの下2ケタを「00円」または「50円」単位に統一して釣銭の発生を減らした。さらに同年8月から全店で手書きオーダーを開始した。
手書きオーダーは、客が用紙にメニュー番号を記入し、店員がそれを読み上げて端末に入力していくシステムである。少しでも客と店員の接触を減らすことが目的だったという。とはいえ効率化する目的もあったのだろう、小誌が2年前に実施したインタビューで、堀埜一成社長(当時)は、手書きオーダー導入後に注文時における店員の滞留時間が短くなったことを話している(『DXは時期尚早!? サイゼリヤがコロナ禍で進める”アナログ戦略”が生んだ想定外の効果』))。
すかいらーくHDのようにタブレット注文にしなかったのは、カスタマーインティマシー(顧客親密度)を重視したためだ。フルサービスのレストランとして接客は省けない、という判断である。しかし、効率化の誘惑に抗えなかったのか、23年末から接客のない新しい注文方法を導入している。
新方式は客が電子棚札に表示されるQRコードをスマホで読み取り、自分で注文する方式だ。
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