ただ、特定秘密保護法では、日本政府が守るべき情報として指定する機密や極秘の情報は次の4分野に限られていた。防衛、外交、テロ活動、スパイ活動防止である。繰り返すが、今こうした国家機密は、適性調査を行い、アクセスできる人を制限しているのである。
「え、たったの4分野だけなの?」と意外に思った方もいるかもしれない。実は、最近では、国家が守るべき情報はこうした4分野にとどまらなくなっている。そこで、守る情報の範囲をAIや半導体、サイバー分野などの先端技術に広げ、適性評価を行って、その評価をクリアした人でなければそうした情報を扱えないようにすることにした。
それを法制化するために、このセキュリティ・クリアランス法案が提出されたのだ。そして、そうした情報を扱うのは公務員だけでなく、民間の企業や研究所にも数多くいるため、対象が民間にも広がることになる。
政府の職員や関係者が関わるような技術研究や開発、ビジネスなどは少なくなかったが、そこで扱われる情報は、他国に漏れると日本の国益を損なうものも多い。国家間の競争の中で、国力を高める目的でそうした情報の奪い合いが現実に起きていることも知られるようになってきた。昨今、「経済安全保障」とも呼ばれる分野である。
例えば、23年6月には、国立研究開発法人である産業技術総合研究所の中国籍の上級主任研究員(50代)が「フッ素化合物」に関する最先端の研究データを中国企業にメールで送り、情報を漏えいしたとして不正競争防止法違反の疑いで逮捕された。セキュリティ・クリアランス制度ができれば、国立の研究所が扱う国家にとって重要な情報に中国籍の研究者がアクセスするのを制限できるため、こうした情報流出は避けられる可能性がある。
また最近、外国のスパイ工作による情報収集などもニュースでよく目にするようになった。そんな背景から「情報を守るにはセキュリティ・クリアランスが不可欠である!」という声が高まった。
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