ようやく制度化「セキュリティ・クリアランス」とは? 民間企業にどう影響するのか世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2024年03月15日 06時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

どこまでプライベートを調査される?

 そこで筆者は最近、特定秘密保護法や公務員法などに絡んで、現在使われている適性評価の適格性の質問票を入手した。これと同じような項目を、セキュリティ・クリアランスの適性評価でもチェックされることになる。どこまでプライベートなことを聞かれるのか、ここで紹介しよう。

 例えば、外国人に知り合いがいるかどうか。「外国人に身元の保証や住居の提供は行ったことがあるか」と聞かれる。さらに外国人から「飲食接待を受けたことはあるか」という質問項目もある。

 また、犯罪歴や懲戒処分の経歴も問われる。さらに、業務上の秘密を部外に漏らしたことはあるか。会社などで指導監督上の措置を受けたことがあるかも聞かれる。

 違法な薬物の使用や、精神疾患の治療歴も答える必要がある。「薬物を容量を著しく超えて服用したことがあるか」という質問もある。また、躁うつ病や統合失調症になったことがあるか。精神的なカウンセリングを受けたことがあるかも聞かれる。

 加えて、飲酒量についても答える必要がある。過去に酒でトラブルを起こしたことはないか、依存症ではないか、などだ。個人の経済状況も問われ、借金やローンの有無、自己破産歴なども聞かれる。

セキュリティ・クリアランスではかなり細かいことまで調べられると考えられる

 こうしたプライベートな部分まで適性評価は及ぶ。これから日本政府や政府機関が絡んだり、国家間の技術開発に関わったりするビジネスや事業にどこかで携わる民間企業や民間の研究者などは、この適性評価をパスしないことには、開発チームから外されたりプロジェクトやビジネスに関われなくなったりする可能性がある。

 もしあなたが、会社などでこうした質問に答えなさい、と指示されたらどう思うだろうか。日本では違和感を覚える人がいるかもしれない。その背景には、日本特有の労働環境に関する事情がある。厚生労働省は、民間の事業者に対して、雇用に関して、就職希望者や従業員に国籍や通称、犯罪歴、懲戒歴などを聞いてはいけないと指導している。だがセキュリティ・クリアランスではそれ以上に突っ込んだ質問をすることになり、そこに整合性がなくなるとの批判も出ている。

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