幹部人材あっせん会社のAvery Fairbank(エイブリー・フェアバンク)によると、英国のAI企業の幹部クラスの社員の報酬は昨年から「指数関数的」に上昇しているという。
「AnthropicやCohereのような外資系AI大手のロンドン市場への参入は、AI人材の獲得競争をさらにエスカレートさせるだろう」と、Avery Fairbankマネージング・ディレクター、チャーリー・フェアバンク氏は話す。
同氏によると、これまで35万ポンド(約6600万円)前後の報酬を得ていた幹部クラスの場合、報酬総額にして5万ポンドから10万ポンド跳ね上がるという。
顧客企業向けに社内チャットボットなどのツールを自社設計するCohereは、DeepMindで7年間主任研究員を務めたフィル・ブルンソム氏を22年にチーフ・サイエンティストとして採用した。同じく、DeepMindを離れたセバスチャン・ルーダー氏も1月に同社に加わった。
ルーダー氏はロイター通信の取材に「業界をリードする多くの頭脳を擁し、ゼロから大規模なビジネスを立ち上げる会社はめったにない。そのようなチャンスが巡ってくれば、それを逃す手はない」と話した。ルーダー氏は報酬に関する質問にはコメントを避けた。
欧州でスタートアップを支援するベンチャーキャピタルOpenOcean(オープンオーシャン)のゼネラル・パートナー、エカテリーナ・アルマスク氏は、DeepMindはもはや「この分野における突出したリーダーとは言えない」と述べる。「これらの企業は全て、同じ人材プールを奪い合っており、AIスキルを備えた人材不足により、それはますます海というより池のようになっている」(アルマスク氏)
DeepMind共同創業者のスレイマン氏は最近、新たに設立したInflection AIのためにロンドンを拠点とする技術スタッフの募集を開始。メンシュ氏のMistral AIは23年12月、ベンチャーキャピタルから4億1500万ドル(約623億円)の資金を調達した。Mistral AIはコメントを控え、Inflection AIにもコメントを要請したが回答は得られなかった。
OpenAIは23年、ロンドンに最初の海外オフィスを開設し、その後すぐにアイルランドの首都ダブリンに2つ目のオフィスを開設した。
Cohereも23年、英国オフィスを開設し、エイダン・ゴメス最高経営責任者(CEO)は現在、本拠点のカナダ・トロントとロンドンを行き来しているとロイター通信に語った。「人材がいるところに行くが、ロンドンにも欧州各地にもたくさんいる」(ゴメスCEO)
人材争奪戦は、働き手が企業側に対して高い要求をしやすくなっていることを意味する。ロンドンを拠点とするAIオーディオ企業ElevenLabs(イレブンラボ)は、新規採用者にストックオプション、高給、完全リモートワークを提供している。
同社は最近、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)やSequoia(セコイア)などのベンチャーキャピタルから8000万ドルの資金を調達した。ロイター通信の取材に対し、近々、従業員数を2倍の100人にするとしている。
パリを拠点とするスタートアップBioptimus(バイオプティマス)もDeepMindの元スタッフによって設立され、2月に3500万ドルを調達した。同社の初期投資家であるトーマス・クロゼル氏によれば、スタートアップはGoogleのようなビッグテックから人材を獲得するために、経営方針について社員の発言権が大きいことを売りにしていると説明する。
「Googleは、その事業分野においてトップクラスであり、最高の人材を輩出している。スタートアップでは、自分が情熱を注ぐ仕事を続けながら、会社の成功にも関与できるまたとない機会がある」(クローゼル氏)
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