ヤマハ発動機は、採用競争力を強化し、能力の高い人材を獲得することを目的に、2024年4月以降に入社する社員の初任給の大幅引き上げを決定した。具体的には次の通りだ。
これらは純粋な基本給額であり、残業代や各種手当、ボーナスなどはこのベースを基に別途支給される。「残業代が、基本給とは別に支給されるなんて当たり前じゃないの?」とお思いの方も多いかもしれないが、実は決して当たり前ではないのだ。
高額な初任給金額をアピールしている一部のメガベンチャー企業では「固定残業制(※1)」を用いることによって、あらかじめ規定時間分の残業代が含まれた総額で表記していたり、「年俸制(※2)」の総額を12分割した1カ月分の金額を月給額として示していたりするので、必然的に月々の報酬額は高く見える「カサ上げ」効果があることに重々留意する必要がある。
少々古いデータとなるが、労務行政研究所「人事労務諸制度の実施状況調査」によると、固定残業代を支給している企業は2010年には7.7%に過ぎなかったが、その後徐々に増加し、2022年には23.3%にもなっている。実は、世の中の会社の4社に1社は導入しているメジャーな仕組みでもあるのだ。
(※1):実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ一定時間分の時間外労働に対して定額の残業代を支払う制度。「◯時間分残業したとみなして支払う残業代」であることから「みなし残業代」とも呼ばれる。
(※2):1年単位で支払われる報酬。12分割で支払われる場合、ボーナスという概念は存在しないか、月額報酬は賞与込みの金額ということになる。
ここ数年の間で、高額初任給設定企業として報道された各社の初任給の内訳をみていこう。初任給月額に含まれていた「固定残業代」や「深夜割増手当」などを抜いていくと、基本給額は一般的な水準に落ち着くことがお分かりいただけるはずだ。
40万円、50万円といった額面金額だけに着目してしまうと、数字のインパクトが大きいあまり一瞬思考停止に陥りそうになるが、このように落ち着いて情報を精査してみると、「月額基本給が25万円前後なら、規模の大きい上場ベンチャー企業であれば一般的な水準かも」「メガベンチャー各社と比べるとヤマハの27.2万円は低いように見えたけど、基本給部分だけを見たら、他のどこよりもヤマハのほうが高いことがよく分かる」などと捉えられるようになるはずだ。
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