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続く賃上げ 「初任給バブル」に隠されたカラクリとは働き方の「今」を知る(1/4 ページ)

» 2024年03月28日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 昨今の深刻な人手不足を背景に、近年多くの企業において賃上げの動きが出ている。

 連合は3月15日、2024年春季労使交渉の第1回回答の集計結果を公表。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は平均「5.28%」となり、過去の最終集計と比較すると、5.66%だったバブル期の1991年以来33年ぶりに5%を超える結果となった。

 また、これまで「賃上げの恩恵を受けるのは大企業ばかり。中小企業では実感が伴わない」などと言われてきた風潮にも変化が生じている。

 同じく連合発表によると、中小企業の賃上げ率も「4.42%」に達し、32年ぶりの高水準となった。賃上げの機運は今や中小企業にまで広がり、わが国で長年はびこってきたでデフレにもようやく出口が見え、物価と賃金が持続的に上がる好循環が今まさに生まれようとしているところだ。

 賃上げの動きは、各社の新卒初任給にも波及している。「マイナビ2024年卒 企業新卒採用活動調査」によると、2024年卒採用で初任給の引き上げを行った企業は全体の7割に上ることが明らかとなった。

 中でも第一生命ホールディングスや野村ホールディングスではそれぞれ約16%引き上げる計画を発表している。また、アシックスでは約24%、東京エレクトロンでは約40%も引き上げると報じられている。いずれも、平均賃上げ率やインフレ率よりもはるかに高い水準だ。少子高齢化と若年労働力の減少が進む日本ではこの傾向はしばらく続き、今後数年間は賃金水準の底上げに貢献するものと考えられる。

 勢いあるベンチャー企業でも、初任給アップの動きは活性化している。これまで本連載においても、2023年春の新卒初任給を42万円に引き上げると発表したサイバーエージェント社(記事はこちら)や、2025年卒より新卒初任給を35万円に引上げることを発表したレバレジーズ社、新卒から2年間限定で年収710万円、月給額59万1675円を提示する採用プログラムを発表したGMOインターネット社(記事はこちら)の事例を採り上げてきた。

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 バブル経済が崩壊してから30年以上にわたって、日本の大卒平均初任給額が20万円台前半のままほぼ変化してこなかった中で、一部企業が率先して30万円、40万円と高額な初任給を提示するようになったことは大歓迎である。

高額初任給に隠されたカラクリとは

 一方で、歓迎ムードで語られる「賃上げ」といえども、単に「月額基本給が上がる」ケースだけではないことに注意が必要だ。われわれからは同じ「賃上げ」のように見える事象でも、実は大きく3種類に分けられるためである。

 具体的には、賃上げと聞いてわれわれがまずイメージする「(1)月額の基本給が上がる」パターンのみならず、「(2)固定残業制のため、固定残業代と合わせた総額で表記されて高く見える」パターン、そして「(3)年俸制のため、賞与分も含んだ年額報酬が12分割された結果、月々の報酬が高く見える」パターンという計3つがある。それぞれの違いを解説していこう。

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