不透明な「マイナス金利解除」の理由 問題は2つある(1/2 ページ)

» 2024年03月28日 07時56分 公開
[ZAKZAK]
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 日本銀行が3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除した。日本銀行による利上げはおよそ17年ぶりのこととなる。植田和男総裁は会合後の記者会見において、マイナス金利解除の理由を「賃金と物価の好循環を確認し、先行き、展望リポートの見通し期間終盤にかけて、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」からと語った。

 しかし、1月23日に公表した「経済・物価情勢の展望」では、2025年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の伸び率は政策委員の予想中央値を1.8%と、2%を下回る予想となっている。賃金動向についても「春闘での賃金の妥結状況における大企業の賃上げ動向を基に中小企業の賃上げもそれなりのものになると予想した」と語っており、見切り発車の印象はぬぐえない。

 日銀の本支店によるヒアリングもデータと合わせて判断材料としたということだが、そのヒアリングの精度がどれほどのものかを国民が知る術はない。

 今回の会合ではマイナス金利政策の解除だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れも終了した。いわゆる“異次元の金融緩和”をやめて、普通の金融緩和に戻したとも言えよう。

 日銀は今後もこれまでと同程度の国債の買い入れは継続し、長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に国債の買い入れ額を増額したり、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指値オペを実施するとしており、あくまで緩和的な状況は継続されることを強調している。実際に株式や為替の市場参加者はそのように受け止めたようだが、金融政策の舵を引き締め方向に切ったことには変わりはない。

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