auが沖縄で「一人勝ち」するワケ 本土とは異なる商習慣「オキナワ・ルール」に学べ(1/3 ページ)

» 2024年03月29日 08時00分 公開
[長濱良起ITmedia]

 食卓に並ぶゴーヤーチャンプルーやサーターアンダギー。三線の音色が奏でる琉球音階。日本本土から見た沖縄の“異文化”は、なにも食や音楽に限ったものではなく「ビジネスでの勝ち方」にも多く存在する。それこそが、沖縄を拠点とするコンサルティング会社ブルームーンパートナーズ(同県那覇市)のCEO、伊波貢氏が提唱する「オキナワ・ルール」だ。

 なぜ「沖縄支店」を作らない方がいいのか。なぜあえて言葉の定義にこだわりすぎない方がいいのか。「これらのルールを知らないと大きく機会損失をしてしまう」と話す伊波氏は、東京・沖縄双方のビジネス経験からそのギャップを埋めようと、書籍『OKINAWA RULES』を出版した。

 キーワードは「沖縄に来る時には、日本語が通じる外国だという覚悟で臨んでください」

「オキナワ・ルール」を知らないと機会損失すると話す伊波貢氏(筆者撮影)

著者プロフィール:長濱良起(ながはま よしき)

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沖縄県在住のフリーランス記者。音楽・エンタメから政治経済まで幅広く取材。

琉球大学マスコミ学コース卒業後、沖縄県内各企業のスポンサードで2年間世界一周。その後、琉球新報に4年間在籍。

2018年、北京に語学留学。同年から個人事務所「XY STUDIO」代表。記者業の他にTVディレクターとしても活動。

著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)がある。


「バターとマーガリン論」から見える沖縄の商習慣

 「そもそものルールが違うんですよ。『野球をやるつもりで沖縄に来たら、ソフトボールをやっていた』みたいなもので。その違いに戸惑うのではなくて、ルールが違うことを理解することが大事です」と伊波氏。その一つが「バターとマーガリン論」だ。

 「多くの沖縄の人は、マーガリンのことをバターと呼ぶことがあります。でもこれを本土の人が『これはバターじゃないよ、マーガリンだよ』と指摘すると『なんか面倒くさい人だな』と思われる場合があります」(伊波氏)

 沖縄出身である筆者も、個人的に腑に落ちる部分がある。バターという大枠の中に「本当のバター」と「植物性のバター的なもの(マーガリン)」があるという感覚だ。一方で香川出身の妻に尋ねると「バターはバターで、マーガリンはマーガリン。スプライトとジンジャーエールぐらい違う」と言い切る。逆にこちらが「そんなに違うの?」と驚くぐらいだ。

2023年11月刊行の『OKINAWA RULES』(プレスリリースより)

 この感覚の差を伊波氏は「本土の方は小分類で、沖縄の方は中分類で物事を考えるからです」と解説する。大きく間違えたり外れたりしていなければ、許容するということだ。細かく商品分類を定めたり、言葉の定義に一つ一つこだわったりするのは、あまり沖縄のビジネス風土には馴染まないのかもしれない。

 逆に「細かさをあまり求めない」ということが、プラスに働く場合もある。アバウトなまま走り出すことを「まず行動してやりながら軌道修正する」という、海外企業に多いアジャイル型思考と結び付け「今70点なら、30点の伸びしろがあると考えればいい」と伊波氏は提案する。

 「日本の基準で考えると『アバウトさ』はマイナス要素に見えるかもしれませんが、この考え方自体は世界的にはスタンダードです」(伊波氏)

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