Dr.スランプ、そしてドラゴンボールが連載された約15年の間に、この2作品がもたらした影響は極めて大きい。ここまで書いたことだけでも、絵柄のトレンド変化、少年漫画の客層拡大(これは集英社ジャンプ編集部の戦略も一因)、アニメ化でのより広範囲への拡大、海外市場開拓が行われる要因となっている。
そしてこの大きな流れは、鳥山明作品や少年ジャンプ内にとどまらず、連鎖的に漫画・アニメ産業全体の発展へつながった。それはドラゴンボールという作品が持った「機能」によるものである。
その機能とはコミュニケーションツールである。80年代後半から90年代前半にかけて幼少期を過ごした元男児の方々は、肌感として理解できると思う。学校の教室で、また放課後に友達の家で、複数人が集まった時に共通の話題として最も適切なものがドラゴンボールだったのである。そして連載終了後30年たった今日でも、当時の読者の間では変わらぬ機能を持つ。漫画家の矢吹健太朗氏も、ドラゴンボールがコミュニケーションを促進したことについて触れている。
また、特定世代を5年以上抑えたことにより、児童向けコンテンツ→ドラゴンボール→少年ジャンプ→少年漫画、そして成長と共により大人向けの漫画へと移行する流れを国内に定着させるに至った。ドラゴンボールはコミュニケーションツールであるとともに、児童向けコンテンツと少年漫画をつなぐゲートウェイともなったのである。なお、ドラゴンボールの連載終了後、この「ゲートウェイ機能」は『ONE PIECE』や『NARUTO』を始めとした作品へと受け継がれている。両作品の作者である尾田栄一郎氏、岸本斉史氏も幼少期に鳥山明氏に憧れたことを語っている。
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