また、先に述べたようにドラゴンボールの人気は国内にとどまらず海外へも広がった。ポップな絵柄とシンプルなストーリー、そして何よりダイナミックなバトル描写は、言語や文化の違いを越えて多くの国・地域の子どもたちの心をとらえたのである。ドラゴンボール登場以前は、「アニメ」といえば一部の日本のサブカルチャーファンの間で人気がある存在だった。
その環境下で、ドラゴンボールはより広範囲の層にアニメが受け入れられる流れを作り出したといえる。つまり3兆円に届こうかという日本のアニメ産業市場の、約半数を占める海外売り上げの源流の一つがドラゴンボールなのである。その海外人気の一端は、鳥山明氏の訃報に際し、欧州・北米・南米・中東と多くの国・地域から追悼が寄せられたことからも伺い知れる。
ドラゴンボールという作品が、世界市場における日本アニメ・日本コンテンツへの入口となり、日本コンテンツがグローバル市場で確固たる地位を確立するきっかけとなった。同氏の功績により、日本の漫画・アニメは世界に誇れる代表的なコンテンツ産業へと発展を遂げたのである。
鳥山明氏と氏の作品は、コミュニケーションの手段としてだけでなく、多くのコンテンツ産業への入り口としても機能し、日本のコンテンツ産業の成長と発展に非常に大きな影響を与えた。今日に至るまで、その影響は続いている。例えば、ドラゴンボールの後に連載された作品『SAND LAND』のアニメが3月20日から始まり、秋にはドラゴンボールの新シリーズ『ドラゴンボールDAIMA』の放送が予定されている。鳥山氏が残した作品は、今後も変わらず、日本そして世界中の子どもたちの心をつかみ続けるだろう。
本稿では鳥山明氏の功績の一部を紹介したが、その貢献の全てを記述することは難しい。同氏の業績は、日本の漫画・アニメ文化、そして日本の歴史に永遠に刻まれることだろう。
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