超異例! スタッフがほぼ「スキマバイト」の居酒屋、どのように教育や運営をしているのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/4 ページ)

» 2024年03月29日 10時25分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

メニューのインプットに強弱、採用にも工夫

 「結論からいうと、全く問題ありません。一つの例ですが、当店には『烏森ハイボール』というオリジナルのお酒があります。どこの店にもあるお酒だけでなく、他の店にない特徴的な看板メニューを置くことによって、ドリンクのメニュー表を見たお客さまからの質問が烏森ハイボールに集中するわけです。

スポットワーカーの試食風景(提供:タイミー)

 そこで、あらかじめ仕事を始める前の時間に、こうしたいくつかの看板メニューで試食・試飲会を開催して、どういうものなのかを頭に入れてもらっています」(ミナデイン・営業本部 THE 赤提灯店長 上野翔氏)

 つまり、メニュー表づくりの段階で、THE 赤提灯で売りたい特徴的な商品をいくつか決めているわけだ。珍しいメニューであることから、店員への質問は、概ねその看板商品に集中する。スポットワーカーには、仕事を始める前に実際に飲食してもらい、自分の言葉で説明できるように準備しておく。そうすれば、同店のアルバイトとして初心者であっても、比較的スムーズに顧客とのコミュニケーションが取れる。

清掃中のスポットワーカー(提供:タイミー)

 OJTの時間では、テーブルの下に番号が打ってあるのだが、配膳ができるようにテーブル番号も覚えてもらう。

 「ずっと突っ立っているだけで、お客さまから遠目に『すみません』と呼ばれているのでは困ります。『ラウンド』というのですが、席を回って、どの席では何を飲んで食べているのかを把握してもらい、空いているお皿があれば下げてもらったり、ドリンクが残り1割になっていたら『お代わりをお持ちしましょうか』と声掛けをしてもらうようにしています」(前出・上野氏)。

 THE 赤提灯では、スポットワーカーには、顧客目線で、自分が顧客としてお店に行った時にしてもらいたいことをするように、心構えの部分を重点的にレクチャーしている。

マグロぶつ(出所:食べログbyお店)

 その他、初めてシフトに入った人向けの“カンペ”もあり、いつでもスポットワーカーが確認できる仕組みを構築している。

 求人の仕方にも工夫している。タイミーの松本氏は「求人はいくつかのケースに分けて出しており、全くの未経験者だけでなく、経験者も採用するようにしています」と話す。つまり、全くの飲食店未経験の枠もあれば、10回以上の経験がある人が応募できる枠もある。もちろん、THE 赤提灯で何回か働いたことがある、リピーターの枠もある。中には30回以上リピートして働いている人もいる。完全な初心者だけでなく、頼れる経験者も働いているので、安定したオペレーションにつながっているわけだ。

自家製ツナのマカロニサラダ(出所:食べログbyお店)

 THE 赤提灯は、メニュー数が結構多い。そこで、同店のウリであり、納品日に朝締めしている新鮮なホルモンを使った「もつ煮込み」や「名物ホルモンミックス焼き」、生のクロマグロを使っている「マグロぶつ」「自家製ツナのマカロニサラダ」といったメニューは、しっかりとスポットワーカーに特徴を把握してもらっている。それ以外の、比較的出数が少ないメニューに対する質問は、全て店長の上野氏につなぐ非常に割り切ったオペレーションをとっている。

名物ホルモンミックス焼き(提供:タイミー)

 スポットワーカーにできることには、通常のアルバイト以上に限界がある。それ以上を求めず、リピーターにならできること、社員でやるべきことなどをキッチリ区別することも重要なのだ。例えば、厨房は社員が入って回しているので、スキマバイトはホールでの接客が主たる仕事だ。ドリンクをつくったり、洗い場に入ったり、一部リピーターは料理の盛り付けを担当することもある。

 ちなみにTHE 赤提灯では、社員3人、スキマバイト3〜5人で約60席のお店を回している。

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