超異例! スタッフがほぼ「スキマバイト」の居酒屋、どのように教育や運営をしているのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/4 ページ)

» 2024年03月29日 10時25分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 東京のJR新橋駅から銀座口を出て銀座方面に徒歩1分。JR線のガード下に、一見おしゃれな感じだという以外は、何も変わった店には見えない「新橋銀座口ガード下 THE 赤提灯(以降「THE 赤提灯」と略す)」という居酒屋がある。この店は、アルバイトで働く従業員を全員、超短期のスキマバイト、スポットワーカーでやりくりしている。つまり、長期のレギュラーで働くアルバイトが1人もいないのだ。それでも、大きなトラブルがなく成り立っている。

 この店を訪れた人は、店員がスポットワーカーばかりだとは思ってもみないだろう。THE 赤提灯は飲食店の常識を覆し、人手不足と働き方改革に一石を投じる、地味にスゴい「全国初」の実験店なのである。

店舗外観。どうやって運営しているのか

 経営しているのはミナデイン(東京都港区)だ。創業者で代表取締役の大久保伸隆氏は「塚田農場」を経営するエー・ピーカンパニーの事業部長、取締役営業部長、取締役副社長などを歴任して2018年に独立した。アルバイトをやる気にさせる同社独自の取り組みは、テレビ東京系『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』などで取り上げられて話題になった。

 ミナデインは、地方創生や地域密着、食文化の保全をテーマに、17の飲食に関連する店舗やサービスを運営している。代表店には、新橋の居酒屋「烏森百薬」、虎ノ門ヒルズステーションタワーの和食店「日常茶飯時」といった都心店の他、長野県茅野市にある「道の駅ビーナスライン蓼科湖」にカフェレストラン「たてしな湖畔 エプロンマーク」も展開している。

 同社はTHE 赤提灯のスタッフを、スキマバイト専門のスマホアプリ「Timee(タイミー)」を運営する、タイミー(東京都港区)を通じて調達している。タイミーは17年に、当時、立教大学在学中だった小川嶺氏(現在のCEO)が設立した。

店舗のメニュー
店内の様子

 一般に、アルバイトをするには、履歴書を用意して面接や登録会に出向かなければならない。そのため、なかなかすぐに始められない。一方で、実際に小川氏がアルバイトとして働いて実感したのが、どの業界も人手不足が深刻化していたことだった。そこから、すぐに人手が欲しい事業者と、すぐに働きたい人を結びつける、タイミーのサービスを発想したという。

 タイミーを利用する際、働き手は、働きたい案件を選ぶだけで、応募・面接なしにすぐに働ける。そして、勤務終了後すぐに報酬を受け取れる。一方、事業者は、来てほしい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件に合った働き手が自動的にマッチングする。

 タイミーに登録しているワーカーの数は、24年2月に700万人を突破。導入社数も約9万8000社を数えるほどに成長している。

タイミーの仕組み(出所:プレスリリース)
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