はっきり言おう 「カフェ」の運営は難しい「ワイヤードカフェ原宿」からスタート(4/4 ページ)

» 2024年03月30日 08時00分 公開
[入川ひでとITmedia]
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スタッフのマネジメント

カフェが街をつくる。そして、社会をつくる。』(入川ひでと、クロスメディア・パブリッシング(インプレス))

 従業員やアルバイトには、毎日のようにあなたの志を伝えていきましょう。

 もちろん簡単に可視化できる売り上げや原価の話もします。しかしそれ以上に大切なのは、可視化できない自分たちの志を伝えることです。カフェは、最初の出足は鈍くても、お客さんの支援がもらえると安定するビジネスです。ですから、スタッフの一人ひとりに、オーナーの志が浸透していることがとても重要なのです。

 スタッフには、お客さんからなぜ「ありがとう」を言ってもらえるか、なぜ同じお客さんが1日2回来るのか、なぜこんなイベントをやっているのか、なぜメニューはこうなのかということを、毎日のように共有してください。

 けれども、地域に寄り添ったカフェをつくるからといって、あまりに地元に近いスタッフもダメなことがあります。近所の友だちばかり集まって、常連さんだけの溜まり場になってしまうのは避けたいところです。

 ワイヤードカフェ原宿などのスタートの頃は、スタッフの多くが飲食業界から集まったので、コミュニティ・ハブと言ってもまったく理解してもらえませんでした。

 でも何年か経って、お客さんと話して楽しめるスタッフは残り、料理はうまくてもお客さんと話さないスタッフは徐々に辞めていき、それぞれのカフェのスタイルができあがっていきました。

 若者のヴィジョンも多様化しているのです。例えば一流大学で建築を勉強した人が、一緒に働きたいと言ってきてくれます。建築の勉強とカフェはすぐに繋がらない、でもカフェで働きたいと言うのです。建築を習って、いい街をつくりたいと思ったからカフェで働く。僕は、こういう多様性がもっともっと生まれてくるといいと思います。

 若者たちは、自分の思いを実現できる職場を探しているのでしょう。高い年収をもらえる一流企業に入っても、自分のビジョンを実現できるとは限らない。だからカフェを選ぶことになったのでしょう。

 大学→大企業という画一的な道が必ずしも自分に合っているとは限らないという考え方が、若者に浸透してきています。豊かさの次にある多様性が、いい意味で社会の幅を広げている。僕はこの多様性の中にこそ、カフェはフィットすると思います。建築を志した人がつくったカフェ、食育を考えた人がつくったカフェ。今後、様々なカフェが誕生するのではと期待しています。

この記事は、,『カフェが街をつくる。そして、社会をつくる。』(入川ひでと、クロスメディア・パブリッシング(インプレス))に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


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