新電力会社の撤退・倒産数が2年前の7倍に急増 大手の5月値上げが分岐点に(1/2 ページ)

» 2024年04月01日 17時00分 公開

 帝国データバンク(東京都港区)による「新電力会社」(登録小売電気事業者)についての調査で、2024年3月時点で「撤退」もしくは「倒産・廃業」した新電力会社は119社にのぼることが分かった。これは2年前から7倍も増加していて、21年4月に登録のあった全706社のうち2割弱を占めた。

photo 帝国データバンクによる「新電力会社」についての調査で、24年3月時点で「撤退」もしくは「倒産・廃業」した新電力会社は119社に上ることが分かった(出所:photoAC)

 21年4月7日時点で登録のあった新電力会社である706社のうち、24年3月22日時点で「撤退」「倒産・廃業」したのは累計119社(構成比16.9%、前年同月比43.4%増)で、1年前(23年3月時点)の83社から36社増加し、2年前(17社)の7倍に急増した。

photo 「新電力会社」撤退・倒産企業数 推移(出所:プレスリリース、以下同)

 内訳をみると、「撤退」(これから予定している企業含む)は累計87社(構成比12.3%、前年同月比52.6%増)、「倒産・廃業」は累計32社(同4.5%、23.1%増)。「撤退」は、23年6月の前回調査から23社増加した。

 エネルギー価格が不安定で安定供給が困難と判断した企業や、親会社の方針などで決定した事業再編の過程で、合併や事業移管が発生したため、登録小売電気事業者の登録を廃止・撤退することとなった企業が増えた。

photo 撤退・倒産企業数

 「倒産」は、福岡県の「地元電力」(23年12月破産、負債5億9000万円)と茨城県のスマートテック(24年2月民事再生、負債45億7100万円)、グループ会社である茨城県の水戸電力(24年2月民事再生、負債4億8000万円)の3社が判明した。

photo 新電力会社の主な倒産

 3社とも、電力の調達は卸市場や他企業など外部からの仕入れが中心で、市場での調達価格と需要家への販売価格が逆ザヤとなり収益を圧迫したという。

 「新規契約停止」は累計69社(構成比9.8%、前年同月比38.4%減)となった一方、「契約受付再開」は累計47社(同6.7%、23年6月比51.6%増)へと増えた。前回調査で「新規契約停止」となった87社のうち、今回は16社(同18.4%)がサービスを再開(一部再開を含む)した。

 「撤退」や「倒産・廃業」した119社を除いた、事業を継続している587社の動向をみると、244社(構成比41.6%)が各社ホームページなどで料金の変動について公表していた。公表の形式は、料金改定や約款改定のほか、変動要因となる燃料費調整金などの調整金の導入という形だった。23年秋以降、需要期を過ぎ電力市場も落ち着いたことから値下げに動く新電力会社もわずかにみられるものの、公表企業の9割の料金が実質値上がりするとみられる。その状況下でも、春に向けた新生活や引っ越しなどを足がかりにキャンペーン施策を打ち出し、顧客獲得を図っている様子がうかがえた。

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