TSMC、「一極集中」の懸念払拭に躍起 台湾東部地震で欧米「リスク」指摘

» 2024年04月07日 07時38分 公開
[産経新聞]
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【台北=矢板明夫】台湾東部沖で3日に大規模な地震が発生したことを受け、台湾に複数の最先端半導体工場を持つ台湾積体電路製造(TSMC)への影響に関心が集まっている。「地震や地政学的な緊張が高い台湾に重要な半導体チップ製造を集中させるリスクは大きい」と懸念する声も寄せられている。TSMCは3日連続で「順調に復旧」とする声明を出し、懸念払拭に躍起だ。

 TSMCの半導体受託生産は世界シェア6割を占め、生産能力の9割以上を台湾各地の工場に置いている。特に台南の工場は、米アップルや米半導体大手エヌビディア向けの供給拠点として知られる。「TSMCの生産が止まれば、世界経済の半分は止まる」ともいわれている。一方、微細加工が求められる半導体工場は地震の影響を受けやすく、小さな振動でも精度に大きな影響が出る可能性もあるといわれる。

 台湾メディアによると、3日の地震でTSMCの工場がある新竹付近では震度5、台中周辺は震度4が確認された。地震後、同社の作業員らは安全操業手順に従い、生産ラインを一時停止させて避難し、余震がほぼ収まってから生産を再開したという。

 しかし、その直後、米CNNテレビ、英BBC放送などは「先端半導体チップの生産を台湾に一極集中するリスク」を指摘し、米調査会社CFRAも投資家向けリポートで「工場を1地域に集中させるリスクを再確認する必要がある」と懸念を表明した。

 これに対し、TSMCは地震発生から約10時間後の3日夕、「生産は既に7割復旧した。主要機器は損傷を受けていない」とする声明を発表。4日夜には8割復旧、5日夜には「ほぼ完全復旧」と順調な復旧をアピール。5日の声明では「地震で通年の売上高が影響を受けることはない」ともしている。

 半導体問題に詳しい台湾の与党、民主進歩党の幹部は「近年、TSMCは一部の生産拠点を日本や米国に移すことを決めており、リスクをある程度分散した。過度な心配をする必要はない」と説明している。

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