セブン、祖業のヨーカ堂を分離 それでも関係継続する理由(1/2 ページ)

» 2024年04月11日 08時22分 公開
[産経新聞]
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 セブン&アイ・ホールディングスは傘下のスーパー大手イトーヨーカ堂を上場させながらも、その全株式は売却せず、一部を保有して協業関係を維持する方針を示した。そこには、祖業であるヨーカ堂とその創業家への配慮に加え、人口減少による今後の市場飽和がささやかれる国内コンビニ事業の成長を、スーパーとの協業によるシナジーで描こうとするセブン側の強いこだわりも垣間見られる。

コンビニの成長を支える

 「同じ(グループの)財務規律の中でコンビニとSST(スーパーストア)事業を比較すれば、投資効率が悪くなるのは十分把握している。しかし、一方でコンビニの成長を支えているのはSSTと食の連携だ」

 セブン&アイの井阪隆一社長は10日の記者会見でこう強調。物言う株主の米投資会社が業績悪化の続くヨーカ堂のグループからの切り離しを求める中、改めてイトーヨーカ堂との協業を継続する考えを示した。

 セブン&アイは、スーパー事業の再建策として、ヨーカ堂のアパレル事業の撤退と食品事業への特化、首都圏集中を打ち出した。その後の成長戦略の軸として示したのが、2月に千葉県松戸市にオープンした「SIPストア」だ。

 SIPはセブン―イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、パートナーシップの頭文字。一般的なコンビニの約1.8倍の広さの店舗に、野菜や果物などの生鮮品や総菜に加えて、焼きたてパンなど約1.7倍の商品を用意。コンビニとスーパーの中間的に位置付ける新たな業態だ。

 「国内でのコンビニの出店エリアが限られる中で、同じ業態では成長できない。今後のコンビニの成長余地を考えた場合、生鮮食品は不可欠だ」。みずほ銀行で産業動向分析などに従事した流通アナリストの中井彰人氏はこう分析する。「生鮮品の生産や流通の効率化に向けても、大規模なスーパーをグループ内で活用できて初めてセブンは再成長できる」とみる。

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