SECの規制では、気候変動リスクの開示を開始する大企業は、25年のデータを基に26年から報告を開始します。これはカリフォルニア州のSB253におけるスコープ1、2の排出量報告の開始時期と同様であり、加えて同法では27年からスコープ3の排出量報告が義務付けられます。一方SEC規制の場合、GHG排出量の報告は26年のデータを用いて27年から開始されることとなります。
第三者保証について、SB253ではスコープ1、2に対して26年から限定的保証を開始し、30年までに徐々に合理的保証に移行します。スコープ3については、保証要件は30年からの限定的保証のままとなります。SEC規制の場合、限定的保証は29年から、合理的保証は33年からとなる予定です。
以下にSECとカリフォルニア州法の内容をまとめました。
米国における規制は、直接的または間接的に日本企業に影響を与えます。SEC規制の場合、米国市場に上場している日本企業は直接的な影響を受けることとなりますが、スコープ3の排出量報告は対象外のため、日本企業への間接的な影響は限定的であると考えられます。
他方、カリフォルニア州の両法律の対象となる企業と取引をしている日本企業に対して、間接的影響が大きくあります。
例えば、SB253に基づいてスコープ3の排出量と目標を報告する必要がある企業は、削減目標を達成するために精度の高い排出量データを求めてサプライヤーに働きかけることが想定され、実際アマゾン社などはすでにそのような対応を求めています。
さらに、SB261の対象となる取引先を持つ日本企業が、同法の対象企業の事業にとって重要な存在である場合、気候関連リスクへのレジリエンスを問われる可能性があります。例えば、日本企業の納品物が同法対象企業の製造に不可欠な場合、納品物の生産拠点の気候リスクが問われることとなるのです(SEC規制についても、この点については同様の影響があることが想定されます)。そして、米国に関連企業を有する日本企業は、カリフォルニア州の2法律に基づく情報開示義務を負う可能性があります。
開示要件は地域によって異なるものの、基本的な要素は実はほぼ同じです。GHGプロトコルに基づく排出量報告、気候変動に関連するリスク管理、企業がそれらのリスクにどのように取り組むかについての戦略などです。
これら全ての側面は、ISSB基準に従うことでカバーすることが可能であり、日本でもこれらの有価証券報告書での記載を前提とした検討が進められています。さらに、カリフォルニア州法はISSB基準に基づく報告結果を利用することを認めており、企業の開示準備にかかる労力を軽減することができます。
このように、日本企業はISSB基準に基づく報告を開始することで、米国気候変動開示規制の影響を管理するための準備を整えることが可能となります。
前職はSEC(米国証券取引委員会)国際部門のアシスタント・ディレクターとして、気候関連の開示問題について、国際規制当局、標準制定者、規制機関とのSECの関与などを担当。SEC参加前は、法律事務所に所属。パーセフォー二公式Webサイトはこちら。
日系コンサルティングファームにて官公庁の脱炭素技術開発政策の立案や民間企業へのGHG見える化、脱炭素戦略立案の支援を担当。欧州にてサステナビリティ領域の博士号を取得しており、国内外の脱炭素技術や政策動向に精通。パーセフォー二ジャパンのXはこちら。
米国証券取引委員会(SEC)からパーセフォニに加わり、同委員会で気候とESGの上級顧問から企業財務部門のディレクターを務め、気候変動情報開示提案の起草チームを牽引。SEC参加前は、法律事務所にて上級顧問およびサステナビリティ担当ディレクターを担当。パーセフォー二公式Webサイトはこちら。
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