なぜ、PBなのに安くないの? ウエルシアとマツキヨココカラが「高級志向」を始めた背景(2/3 ページ)

» 2024年04月20日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

近年では健康&自然保護を訴求

 近年では、健康や自然環境の保護を付加価値とした商品も目立つ。23年5月にウエルシアはPB商品に関する戦略発表会と総合展示会を実施し、新商品をいくつか紹介した。

 からだWelciaに関しては、従来の安さだけでなく健康やこだわりを意識した商品が目立つ。ウエルシアは「糖質を抑えた○○」という商品名で23年2月から比較的糖質の少ないパンを販売しているが、同年6月に第2弾として「糖質を抑えた平焼きデニッシュあんぱん」を発売。その後も第3弾・第4弾と新商品を発売している。

 同じく23年6月に発売した「食塩無添加がやさしい7種のこだわり神ナッツ」は、食塩と油を使用せず、こだわりの焙煎方法でカリッと香ばしく仕上げた商品であるとうたう。価格は245グラム入りで861円。従来のPB商品のように安さを売りにしているわけではなく、品質で勝負する姿勢がうかがえる。

800円超のナッツも販売するなど、価格だけの訴求ではないことが分かる(同前)

 くらしWelciaでは海中生分解性不織布を使った「顔も体もこれ一枚!Ag配合フェイス&ボディシート」や自然由来成分を使った「ぬり心地が心地いいオーガニックリップ」など、環境へ配慮した商品が目立つ。前者は30枚入りで438円、後者は658円と、従来消費者がPB商品に対して持つ価格帯のイメージからすると、高めな印象だ。クルエルティフリー(=製造過程において、動物実験など動物を傷つける行為をしていない)の商品も扱っており、同ブランドでは環境保護を新たな付加価値としていることが分かる。

ぬり心地が心地いいオーガニックリップ(同前)

絆創膏が話題になったマツキヨPB

 21年の経営統合で誕生したマツキヨココカラ&カンパニーも、近年PBを強化している。特にマツモトキヨシは1990年代からPB商品を投入、2006年から安さと品質の2軸で訴求するPBブランド「MKカスタマー」を展開し、15年には「マツキヨらしさ」を印象付ける新PBブランド「matsukiyo」を立ち上げた。matsukiyoのラジカセや買い物バッグなどのデザインを模したトイレットペーパーは、18年にドイツの世界的デザイン賞「iFデザインアワード」を受賞している。

 マツキヨのPBはたびたび評判となっており、小学4年生が発案したという「matsukiyo 指にまきやすい絆創膏」は、その機能性から2月にSNSで話題となった。従来の絆創膏と違い、パッドが真ん中ではなく端に寄っているため、パッドの両側がくっついてしまうことがない。子ども1人でも巻きやすい利便性を持っている商品だ。SNSでは子どもをもつ親世代からの反響が大きかったようだ。

小学生が発案したという絆創膏(出所:マツキヨココカラ&カンパニー公式Webサイト)

 同社はアプリやカード、店舗など、マツキヨで培ってきた1億3000万件以上のビッグデータを有しており、データを活用して見込み客を予想し、PB商品を開発している。PB商品全体の売上高比率では、26年3月期に15%を目指す(23年3月期は12.7%)。

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