ぎょぎょ、水の量が多すぎる? 札幌の水族館「AOAO」で“脇役”が主役になった舞台裏週末に「へえ」な話(2/5 ページ)

» 2024年04月20日 07時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

“脇役”にスポットを当てている

 さて、なぜ筆者はAOAOを取材しようと思ったのか。施設側が“脇役”にスポットを当てていて、「なんだかマニアックな香りが漂うなあ」と感じたからである。

 「ん? 水族館の主役といえば、イルカとかサメのことかな? ひょっとしてこの水族館には主役がいないってこと?」と推測されたかもしれないが、その通りである。AOAOには、イルカもいないし、シャチもいない。アザラシもいなければ、エイもいない。

六角形のブロックを組み合わせて陸場をつくっている。ブロックを組み変えることで、陸場の形状を変更できる

 水族館の主役がいないのには、理由があるのだ。その謎を解くために、時計の針を数年前に巻き戻す。新しい水族館をオープンするにあたって、関係者は「ああでもない、こうでもない」といった議論を交わしていた。構想に1年半ほどの時間をかけていく中で、ちょっと信じられない事態に陥ってしまう。

 施設の設計を進めているタイミングで「やっぱり主役は必要だよねー。頭がトンカチのような形をしている『シュモクザメ』を展示しようよ」といった話をしていた。北海道には生息していないこともあって、主役をシュモクザメにする方向で話が進んでいった。しかし、である。予定していた水槽を配置して、そこに大きなサメを泳がせると、建物が重さに耐えられないことが分かってきたのだ。つまり、水の量が多すぎる問題である。

水の循環ラボ

 館長の山内將生さんは、当時のことを次のように振り返る。「設計を担当した人も、建設に携わった人も、私たちも、水族館をつくったことがない人たちばかりでして。いわば“素人”が集まったこともあって、初歩的なミスをしてしまいました」

 山内さんは金融の世界を経験して、その後、水族館の運営などに携わる。全くの未経験者ではないものの、建物をイチから作り上げる経験がなかったので、重さの計算を見落としていたのだ。

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