一部の強気な価格設定について、同社はインバウンド価格ではないとしつつも「従来のグローバル旗艦店のインバウンド比率は約5割であり、銀座店はそれ以上になりそうだ」と話す。やはり高い価格設定や演出性のある内装は、少なからずインバウンドを意識しているのだろう。
立地的にも、今回の銀座店がインバウンドをターゲットにしていることは明らかだ。出店したマロニエゲート銀座2にはユニクロやダイソーが出店するなど、インバウンドに人気の日本らしいテナントが入居している。中でもユニクロの店内は外国人の姿が目立つ。こうした店舗の来店客が、くら寿司も利用する相乗効果を期待しているのかもしれない。
大手飲食チェーンでインバウンドに特化する動きは珍しいとはいえ、少しずつ出始めている。近年では吉野家がインバウンドをターゲットにしたような商品を出しており、観光客が多い約100店舗で「鰻重牛小鉢セット」を提供している。値段は鰻2枚盛りで2338円だ。築地銀だこを運営するホットランドも、天ぷら専門店「日本橋からり」などさまざまな業態店をインバウンド需要が期待できる観光地で出店する方針だ。
インバウンド店には高い利益率を期待できる。飲食業態は人流回復で売り上げが伸びているものの、原材料費や人件費の高騰で利益は圧迫されている状況だ。くら寿司も売上高こそコロナ禍以前の水準を上回っているが、2023年10月期の営業利益は2019年10月期を下回る。収益の確保を目的として、今後は大手飲食チェーンによるインバウンド特化型店舗の出店や、対象メニューの提供が加速していくのかもしれない。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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