高級メニュー並ぶ銀座の「くら寿司」 3貫1000円超に潜む勝算(2/3 ページ)

» 2024年05月02日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

3貫で1000円超の高級メニューも

 店舗限定メニューはかなり強気の価格設定である。みたらしや白あんが乗った団子は150・200円だが、握りメニューは従来の回転寿司とは思えない価格だ。まぐろや車エビなど握り5貫とカステラ玉子焼が乗った「特上にぎり『蔵-KURA-』」は1800円。まぐろ・車エビ・すずきの「特撰三貫『銀座』」は1200円である。貝類3貫で1200円といったメニューもある。

強気な価格設定の商品が並ぶ

 天ぷらも高めの価格帯で、徳島のアシアカエビや真あじなどが乗った「特上天ぷら盛り」は5個で1300円だ。店舗限定の天ぷら盛り4種のうち、3種類が1000円以上である。筆者もいくつか試食したが、回転寿司にしては高品質であり、値段相応と感じた。

 ちなみに、店舗限定メニューは他のグローバル旗艦店でも提供している。大阪のなんばパークスサウス店ではネタとシャリを海苔で巻いたsushiロールを、原宿店ではクレープメニューを提供する。原宿店では銀座店のくら小江戸と同様、店舗限定のクレープをスイーツ屋台から直接受け取るシステムを採用している。

天ぷらも高めの価格

 もちろん通常の寿司メニューもあり、銀座店の場合は1皿150円〜とやや高めの設定になっている。くら寿司の最も安い店舗は1皿110円〜。銀座店が特段高いわけではなく、150円以上の店舗は浅草や池袋、大阪・梅田など他にも約20店舗ある。立地を考えれば妥当といったところだろうか。

回転寿司も健在

 くら寿司らしく、実際に寿司ネタがレーンを流れる“リアル回転寿司”も健在だ。2023年1月にスシローで起きた迷惑事件以降、大手回転寿司チェーンはレーンで寿司ネタを流すのを取りやめ、注文品や高速レーンのみとする動きが進んだ。同事件では男性客がしょうゆ差しの注ぎ口をなめる動画がSNSで拡散し、衛生面から回転寿司を忌避する消費者も現れたという。その後スシローは2023年11月、商品を常時レーンに流すサービスを再開しない方針を発表した。

 一方、くら寿司では銀座店を含め、通常店でも商品をレーンで流し、大手チェーンでは唯一とうたっている。こうしたスタイルを堅持する背景について「Z世代を中心に若年層の需要があること」「エンターテインメント性を重視したいこと」などの理由を挙げている。抗菌カバーで衛生面を確保し、不振な動きを察知するAIカメラで迷惑行為への対策も講じるなど、抜かりない。

レーンを流れる寿司も健在

 過去記事『スシロー「デジタル回転寿司」の衝撃 くら寿司との都心決戦を左右する「レーン戦略」』でも取り上げたように、くら寿司はサイドメニューが豊富で景品システムの「ビッくらポン!」を導入するなど、子供ウケを狙ったような施策が見られる。ファミリー層やインバウンドをターゲットとする上で、レーンで商品を流すエンタメ性は欠かせないのだろう。

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