いきなり!ステーキが、名物「オーダーカット」を廃止していた! ピークから5年、経営再建の現在を探る(3/3 ページ)

» 2024年05月06日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

名物だったオーダーカットを廃止 構造改革で黒字化

 事業を立て直すに当たり、同社はかつての主力事業であったペッパーランチを2020年8月に他社へ譲渡し、現在ではいきなり!ステーキ事業に集中している。近年の主な施策といえば、店舗数の削減と、メニューの絞り込みだ。

 その結果、2020年12月期から2023年12月期にかけて店舗数・セグメント売上高は縮小しているものの、収益化には成功している。2020年12月期のセグメント利益は約17億円の赤字だったが、2021年度以降は黒字化を達成。直近の2023年12月期も9億円弱の黒字である。

 メニュー改定については値上げを相次いで実施したほか、4月3日の改定では、一部商品で継続していたオーダーカットを廃止し、サーロインステーキを終売とした。

名物だったオーダーカットを廃止、既定のグラム数から選ぶ形に(同前)
ランチはご飯にスープ、サラダが付く(同前)

 現在のグランドメニューには「ワイルドステーキ」や「赤身!肩ロースステーキ」などが並び、150グラム・200グラム・300グラムのように、規定のグラム数から選ぶシステムを取っている。コアなファンの獲得に貢献していた「肉マイレージ」システムは2020年12月、従来のグラム累計方式から来店回数で特典を決める方式に“改悪”したことにより、批判された。コスト削減が目的とみられる。

テークアウト用の「ステーキ重」(同前)
メニューの中でも高級な部類の「特選ヒレステーキ」(同前)

 その後、2023年1月に従来の累計方式を復活させ、現在に至る。肉1キロでシルバー、3キロでゴールド会員といったランク制であり、ランクに応じて誕生日クーポンやドリンク特典がもらえるシステムである。

この5月にはアプリをリニューアルする(同前)

急成長は見込まず、堅実な成長へ

 同社は、2025年12月期におけるいきなり!ステーキ事業の売上高目標を約140億円としている。2023年12月期の実績が約138億円であることから、やはり著しい規模拡大は見込んでいないことが分かる。会社全体としては国内で新業態を模索し、いきなり!ステーキについては中長期でアジアへの進出を模索する。

2023年にフィリピンでオープンした「IKINARI STEAK One Ayala Mall店」(出所:プレスリリース)

 ピーク時にはニューヨークに11店舗を展開していたが現在は撤退し、海外店はフィリピン3店舗、台湾1店舗の計4店舗のみが残っている。フィリピン店は国内店と違って広く、やや高級感のあるような雰囲気である。高回転率を狙っているわけではなく、価格も現地の水準からするとかなり高めだ。まずは認知度向上を狙い、急な出店はしないという。過去の反省もあるのだろう。失敗を生かしどう攻めていくのか、いきなり!ステーキの今後に注目してみたい。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.