マスコミのニュースを見ていると、グローバルで活躍しているトヨタなどの大企業が日本経済をけん引しているという錯覚に陥ってしまうが、実は日本経済はGDPの6割を占める個人消費が支えている。ここが冷え込むので経済が停滞する。
では、なぜ冷え込んでいるのかというと「低賃金」だ。そう言うと、「それは税金が高いからだ」という人たちがいるが、紙幣を刷れば経済成長ができるならみんなやっている。例えば、月10万円しか稼げない人の消費税をゼロにしても、その人は貧しさから抜け出すことはできないし景気も良くならない。労働の対価で得るカネそのものを「底上げ」しないことには、焼け石に水なのだ。
そこで賃上げが必要なわけだが、春闘がどうしたとか大企業のベアはほとんど関係ない。日本の会社の99.7%は中小企業であり、日本人の7割がここで働いている。わずか0.3%の大企業の賃上げが99.7%の賃上げにまったくつながらないことは「失われた30年」を見れば明らかだろう。
つまり、日本経済の停滞とは突き詰めれば「中小企業の賃金の停滞」なのだ。そして、これまで説明してきたように、「移民」はこの構造的な問題をさらに悪化させてしまう。手前味噌(みそ)だが、筆者はそれを5年半前の記事でも以下のように指摘させていただいている。
人手不足というクライシスは、低賃金労働に依存する経営者を追いつめて、「生産性向上」と「賃金アップ」に踏み切らせる。だが、安易に外国人労働者を受け入れて経営者を甘やかすと、そのイノベーションは全てパアになる。
安倍政権の移民政策は、このような残念な結末を招く恐れが極めて高いのだ。
残念ながらこの「予言」は的中してしまっている。日本の賃金はいっこうに上がらず、岸田政権になってからも実質賃金は23カ月連続でマイナスだ(2月の毎月勤労統計調査)。平均給与では韓国に抜かれ、ベトナムなどの都市部では日本よりも高給取りが山ほどいる。
「円安」「デフレ」うんぬんではなく、海外から「低賃金労働者」をたくさん受け入れたことで、「低賃金企業」が大量に生き残ることができて、その結果、国内労働者の賃金まで低くなっているのだ。
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優秀な若手がどんどん辞めていくが、「社内運動会」をやっても防げないワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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