実は、入金消込の自動化のために、銀行のバーチャル口座を利用するのはよく使われる手法だ。多くの銀行が、消込自動化をうたい同様のサービスを提供している。しかし、バーチャル口座を提供するのはあくまで銀行だ。
今回のBill One発行では、Sansanがまるで自社で銀行サービスを提供しているかのように、システムから顧客にバーチャル口座を割り当てられるところが画期的だ。
これを実現するのが、住信SBIネット銀行のBaaSプラットフォーム「NEOBANK」だ。NEOBANKは、APIを介して銀行システムの機能を法人パートナーに提供するサービス。パートナー企業は、NEOBANKのAPIを活用して、自社ブランドの銀行サービスを立ち上げることができる。
複数のネット銀行がBaaSサービスの提供を始めているが、住信SBIネット銀行は提供企業数でトップを走り、BaaS口座数は158万口座に達している。大西氏は住信SBIネット銀行を選択した理由として「実現したかったことと、実現までのスピードを考えると、ベストだった」と話す。今回の入金用法人バーチャル口座も、Bill One発行のために住信SBIネット銀行が新たにAPIとして開発した機能だという。
住信SBIネット銀行にとっても、法人向けBaaSは新たな取り組みだ。同行はこれまで、個人向け口座のBaaS領域に注力してきた。しかし「次の成長領域は法人分野だ」(住信SBIネット銀執行役員 兼 BaaS事業本部本部長の前田洋海氏)と判断。法人向けBaaSのマーケットに参入することを決めた。
「法人取引は個人向けと比べて収益性が高い。また、大企業の取引先に対して、大企業のブランドを冠した銀行サービスを提供することで、取引先にもメリットのある優遇サービスも実現できる可能性がある」(前田氏)
SansanにとってBill One Bankはあくまで入金消込の手段の一つでしかない。「銀行機能を提供することを主眼に置いたというより、消込がソリューションとして成り立つ方法を考えた」と寺田氏は言う。
一方で住信SBIネット銀行にとっては、注力領域の一つである法人口座獲得に資する取り組みだ。「入金消込を使ってもらえば、決済データを使ったトランザクションレンディングなど、いろいろな付帯取引につながっていく。結果的に、メインバンクとして食い込むきっかけの一つにしたい」(前田氏)
住信SBIネット銀行は、SansanのようなSaaS企業だけでなく、インフラ企業などさまざまな業界の企業とのパートナーシップを想定している。すでに別の法人向けBaaSのプロジェクトが動き始めており、この分野のトップランナーとして、新たな市場の開拓を進める考えだ。
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