「290円ラーメン」終売でもまだまだ安い幸楽苑、なぜコロナ禍が明けても不調が続いているのか(1/3 ページ)

» 2024年05月29日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

 東北・関東を中心に、ロードサイドに店を構えるラーメンチェーンの「幸楽苑」。醤油・塩・味噌と3種類のラーメンを提供し、チェーンらしいスタンダードなメニュー構成が特徴だ。以前は関西にも進出して全国展開を目指していたが、業績悪化に伴い西日本からは撤退するなど、コロナ禍以前から縮小路線が続いている。

 アフターコロナにおいても、大手ラーメンチェーンの業績が好調な一方、客足が戻らず、幸楽苑だけ取り残されたような状態だ。

 長きにわたり低迷を続ける理由を探っていく。

不調が続く幸楽苑

290円の中華そばで消費者の心をつかんだが……

 運営元の幸楽苑ホールディングス(HD)は2024年3月期末時点において、グループ内で389店舗を展開している。幸楽苑のほか、フランチャイジーとして「焼肉ライク」なども運営するが、全体のうち354店舗を占めている幸楽苑の直営事業が収入源だ。

 幸楽苑のメニューは醤油・塩・味噌の3種類をベースとする。例えば塩ベースの場合は通常の「しおらーめん」に加え、「しおねぎらーめん」やチャーシューが乗った「プレミアムしお」など、トッピングの種類も豊富だ。ラーメンに餃子や炒飯が付いたセットメニューもある。

「プレミアムしお」にご飯と餃子が付いた「プレミアムしおセット」(出所:同社公式Webサイト)

 1967年に、創業者である新井田傳氏が父の「味よし食堂」を「幸楽苑」に改称したのが同チェーンの原点だ。1960年代は地場の会津若松市で、1970年代からは福島県内で店舗数を増やしていった。1990年代には茨城・群馬・埼玉・千葉などに進出、1999年には全社で100店舗を達成した。都内に初進出したのは2000年で、意外と最近のことだ。

290円だった中華そばは、終売後何回か「中華そばクラシック」として復活。しかし2022年は390円となっていた(出所:プレスリリース)

 現在のような低価格路線を始めたのは2001年であり、デフレの時代を反映して社内でいくつかあったブランドを、幸楽苑ブランドへ統一していった。2004年には200店舗を達成し、2006年までの間に京都・大阪・兵庫など関西にも進出している。2006〜15年に提供していた290円の「中華そば」を看板商品として消費者の心をつかみ、2012年には国内で全社500店舗を達成した。

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