さらに1980年代には、バブル経済期に向かって日本経済がさらなる成長を続ける中で、企業間でイメージ向上や採用強化、社内における意識統一や連帯感醸成に資する戦略として「CI(コーポレート・アイデンティティ)」ブームが巻き起こりました。企業制服は、ロゴマークとともにその一翼を担う重要ツールとして着目され、各企業の予算が大幅に増加したのです。
しかし、1990年代半ばにバブル経済が崩壊して以降、日本経済は低成長期に入ります。1990年代後半の金融危機、2008年のリーマンショックなど、相次ぐ経済不況に見舞われた日本企業は、たびたびコスト削減の波にさらされました。
リーマンショック後は、制服を採用している業種の代表格であった銀行を含む金融業での採用率が50%台に落ち込むなど、市場の衰退が明確になりました。現在では30%を下回る水準にまで落ち込んだといわれています。企業制服の廃止や見直しは業界を問わない大きなうねりとなって、採用率や予算は低下の一途をたどっているのです。
ユニフォームネクストは、制服の製造・販売を手掛ける企業として、1994年に福井県で創業しました。ちょうどバブル経済が崩壊した直後にあたり、企業制服の歴史上では「秋」から「冬」の時代に向かっていく最中での事業スタートであったといえます。
苦しい時代にありながら、同社はリーマンショック後も、コロナ禍でも増収経営を続けています。利益面でも、コロナ禍の2020年こそ前年比マイナスとなったものの、営業黒字を確保。直近の2023年12月期では、売り上げが2017年に上場したときの2倍以上となる、約74億円、営業利益も同1.5倍ほどの5億円近くを計上するなど、着実な成長を遂げているのです。
経営上の大きな変革は、現社長である2代目の横井康孝社長が就任した2007年にありました。横井社長は1997年の入社以来、10年にわたって「労力の割に業績が向上しない」と感じていた営業経験を踏まえて、大きな戦略転換に着手しました。
具体的には「ランチェスター戦略」にヒントを得て、飲食店向けのユニフォームに的を絞りました。ECにも参入し、販路拡大を図ったそうです。他社のECが商品写真や簡素な商品説明に終始していることに勝機を見出し、自身の経験を踏まえて顧客視点の懇切丁寧なサイト構築を心掛けたのです。
ユニフォーム営業の現場で、顧客がどのようなニーズを持っているか身をもって体験していたことで、色やサイズをはじめ、細かい要望に対応するサイトを構築するように腐心したといいます。全てをECで完結しようとせず、細かい要望には人が対応するハイブリッド体制も確立し、他社との差別化を果たしました。実は筆者も2010年代に自社で飲食店を運営しており、ユニフォームネクストを利用したことがあります。同社のきめ細かいサービスを感じさせるECサイトには、他社と異なる強い印象を持った記憶があります。
「自信を持って接客してもらいたい」 制服をジェンダーレス化した「びっくりドンキー」「JINS」の狙い
変わる「企業の制服」 ジェンダーレス化や廃止の波、各社の対応は?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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