企業の「制服」市場がジリ貧なのに、なぜ? 福井発「ユニフォームネクスト」が成長を続けているワケ(3/3 ページ)

» 2024年05月30日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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企業制服に新たな役割が生まれ始めている

 ユニフォームネクストは、2012年に経常利益が1億円を突破したことから株式上場の検討に入り、2017年に福井県本社企業として10年ぶりとなるマザーズ上場を果たしました。飲食業特化から始めたECも、作業服や事務服、清掃に物流、さらに医療・介護など、職種や業種別で細かくラインアップを増強。生地・色・サイズ・オプションなど、細かなオーダーにも対応できるよう工夫を凝らしています。

 現在、総アイテム数は1万種類以上。さらに売れ筋の商品は3カ月分以上の在庫を備えて注文翌日の発送を可能にしたことも好評で、一度利用した顧客からの圧倒的なリピート支持を得て、コロナ禍も乗り切ってきたのです。

 ここにきて、ユニフォームの流れはまた大きく変わろうとしています。矢野経済研究所によれば、縮小を続けてきた制服の国内市場規模はコロナ禍を経て、回復の兆しを見せているというのです。

 その要因は、制服に新たな目的を持たせた活用の広がりです。例えば、一部の飲食チェーンなどでは、制服を社員のモチベーションを高めるツールと位置付け、複数種類を用意して選べるようにすることで、アルバイト応募者へアピールして人手不足の解消に一役買っています。環境配慮素材を使用して、SDGsへの積極姿勢を示すというような新たな活用も出てきています。

さまざまな訴求を行っている(同前)

 ユニフォームネクストでは、これらの新たな動きにも対応できる姿勢を示しています。その一つが「制服委員会」と呼ぶ取り組みです。顧客社内に複数部署の現場社員が参加する制服検討の委員会を立ち上げ、ユニフォームネクストの社員も加わって、企業の経営方針や事業戦略に合致した制服選びを手伝うという試みです。制服選びをモノ消費ではなくコト消費として捉え直す、新たな事業展開といえるでしょう。

 企業における制服活用の歴史は、わが国の産業の歴史を映す鏡であるかのようにも思えます。昨今はダイバーシティにジェンダー平等、さらにはパーパス経営など、新たな経営課題が次々と登場し、企業の制服も、それらの経営課題に沿った高度な提案が求められる時代になっているのです。若干の回復を見せているユニフォーム市場ですが、この先に高度成長期やバブル期のような急拡大はあり得ません。となれば、ユニフォームネクストや市場が今後さらなる飛躍を遂げるには、新たな時代に適合した柔軟な提案力の醸成がカギといえそうです。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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