「当社はEDRから事業を始めました。これまでのEDRはテレメトリーをエンドポイントから収集し、AIと機械学習を使った相関付けをして、攻撃検出と対応までの平均時間を削減する努力をしてきました。しかしITインフラには、エンドポイント以外にも、ネットワーク、ファイアウォール、アプリなどがあり、ここも攻撃されています」
SDRには、これまでの製品と違う新規性と革新性があると話す。幅広いITインフラからテレメトリーを収集・分析し、対策を取れるようにした一段上のサービスだという。
「攻撃が大規模で、アラートが多数上がるとアナリストが重要なアラートを見過ごし、侵害を受けてしまうことにつながります。AI活用によって見過ごしを防ぐなど、アナリスト依存を避け、確実に対策ができるなど、さまざまなメリットがあります」
SDRの販売によって、競合他社が追随してくることは避けられない。優位性を保つ方法としては「継続した製品の改善によってアドバンテージを失わないようにする」という。
「もちろん他社も追随してくるでしょう。私たちの製品は、高速で走行するF1の車に似ています。誰にでも運転できるわけではなく、メンテナンスするのにも非常にコストが掛かります。そこで当社のエンジニアが、各項目の適切な設定やインテリジェンスの付与をし、顧客が運転できるようにすることによって、最適な形で製品を扱えるようにしています。検知から得た情報や知見をさらに製品に反映させます」
昨今のAIの動きについては「創業当初から、AIは私たちのプラットフォームの核となっていて、多大な経験と知識を持っています。一方、最近の生成AIは、自己認識できる技術であって、これまでとは少々異なります」と話す。
「(生成AIの)道のりはまだ始まったばかりで、主流化するまでには時間がかかると思います。一方で、すでに生成AIを導入したサイバー犯罪者もいるでしょう。そうなると高度化がかなり進んだ攻撃となり、(防御側は)防御することがますます難しくなります。今後、侵害に関する件数と頻度は上昇するとみられ、いずれ製品に生成AIを取り込んでいくことは避けられないと思います」
コンピュータの歴史を見ると、時代が進めば進むほどコンピュータへの依存が強まっている。
「ビジネスのニーズがそこにあるのは確かですから、製品やサービスの開発に10億ドルを投資しています。最近、注目を集めるランサムウェア攻撃の事例を見ると、サイバー攻撃を受けた後、攻撃者に支払うことになるであろう身代金などのコストは、当社のソリューション導入コストに対して10〜20倍にもなります。ランサムウェア攻撃を1度受けた組織が2回目の攻撃を受ける可能性も80%を超えていて、本当に終わりのない問題になっています」
一昔前、サイバーセキュリティは「あったらいいな」というものだった。それが、今では必須のものになったということだ。
インタビューの最後に「近い将来、銀行強盗はなくなりますね?」と聞くと「はい、サイバー攻撃による強盗はもっと簡単ですから」と答えた。この回答こそがサイバー攻撃の深刻度合いを表している。
日本を「ホームグラウンド」と言ったネイゲル社長。攻撃が巧妙化する中で、同社への期待と責任がより増すのは間違いなさそうだ。
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