シェイクシャックは日本に上陸して9年になるが、コロナ禍が長期化したこともあって「スターバックスコーヒー」を成功に導いたサザビーリーグが経営している割に、発展していないイメージだ。
渋谷店は「旗艦店」と呼べる程度のスケールがあり、アーティストとのコラボした壁画も話題を呼ぶなど、渋谷の新名所になることを目指しているようにうかがえる。懐かしいインベーダーゲームを想起させる壁画には、スクランブル交差点や渋谷センター街などの風景に紛れて、シェイクシャックの店員も描かれている。
シェイクシャックはもともと商品のクオリティーに定評があり、ホルモン剤フリーのアンガスビーフを100%使用しているのが売りである。注文が入ってから丁寧に鉄板に押し付けて焼き上げるパティは、牛肉本来の風味を引き出しており、だからこそ米国ではマクドナルドを圧倒するほどの支持を得たといえる。
ホットドッグにポテトフライ、店内で手作りするレモネードやシェイク、さらには「ブルックリン・ブルワリー」によるオリジナルビールも評判が良い。米国の健康を気にする意識の高い人たちは、成長を促進するためホルモン剤を飼料に入れて育てている、一般的な北米産の牛肉を敬遠している。だからこそ、米国ではホルモン剤使用を禁じられている、鶏のチキンバーガーが人気になってきたのだ。一方、日本やEUでは、牛はもちろん、家畜全般にホルモン剤の投与を禁じている。和牛が欧米で好まれるのは、味ばかりでなくホルモン剤フリーの食材だからでもある。
シェイクシャックはホルモン剤フリーの牛肉を武器に米国で人気を博したが、日本ではまだマクドナルドを脅かすほどではない。日本のマクドナルドは世界の中でもレベルが高いとされており、消費者のデフレマインドの強さもあって根強い支持を得ている。
しかし、意識の高いインバウンドにとってホルモン剤フリーは重要であり、シェイクシャックが渋谷に出店した意義は大いにある。メインのシャックバーガーはシングルで710円、ダブル1010円で、日本人には少し高いかもしれない。しかし、インバウンドにとっては、手ごろな値段のはずだ。
シェイクシャックでは当初コーヒーを出していなかったが、2018年10月にホットコーヒー・ホットラテ、2019年4月からはアイスコーヒー・アイスラテの販売を始めた。日本ではファストフード店のイートインは喫茶店の機能を兼ねている。日本マクドナルドの原田泳幸元社長はこの点を理解し、2008年に100円で飲める本格コーヒーを仕掛けて販売を伸ばした。そうした需要を取り込めれば、さらに勢いは増すだろう。
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