7月3日から新紙幣が発行される。偽造防止などが目的とされるが、キャッシュレス決済やデジタル通貨の取り組みも増えるなかで、「お金」のあり方は変わるだろうか。
万が一、偽造されたお金が広く出回ると、お金の信用がなくなり健全な取引に支障が出て、国民経済にとってマイナスである。そうしたことを防ぐため、紙幣については、これまでもおおむね20年ごとに改刷(紙幣の偽造防止技術やデザインを新しくすること)を行ってきている。
一部の識者は、今回の紙幣刷新の別の狙いとして「タンス預金」のあぶり出しがあると主張するが、これまでの紙幣も引き続き有効であるため説得力を欠いている。これまでの紙幣が使えないとするならば、詐欺的行為にもなりかねない。家計部門が保有する現金が過去最高水準となっているのは単に預金金利が低いからだ。
今回の新紙幣に伴い、金融機関のオープン出納システムや現金自動預払機(ATM)、自動販売機などの特需を期待する向きもある。
しかし、新紙幣では、寸法の変更は前回同様にない。このため、ハード面の更新需要は限定的だと予想され、ソフトウエアの更新需要が中心となる。
財務省が紙幣刷新について発表した直後の2019年4月10日に衆院財務金融委員会で示した「日本自動販売システム機械工業会」の試算によれば、今回の新紙幣による現金取扱機器の改修特需を約7700億円と見込んでいる。
ただし、これまで20年程度も紙幣改刷がなかったことを考えると、1年あたりにすれば大きな数字ではない。
しかも、小売り向けのATMは単価が安い。自販機の普及台数も減少トレンドにあるため、今回の改修特需は前回ほど大きいものとはならないだろう。
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