25カ月連続マイナスの実質賃金 “いつ浮上”するのか(1/2 ページ)

» 2024年06月12日 07時30分 公開
[ZAKZAK]
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 厚生労働省の毎月勤労統計で、実質賃金が25カ月連続でマイナスとなった。プラスに転換する時期はいつごろか。早期にプラス転換させるには、どのような施策が必要だろうか。

 まず、実質賃金に関する統計の特徴を述べよう。2023年の賃上げ率は3.58%(連合調査)であったが、同年の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は3.1%の上昇率で、賃上げ率の方が高くなっていた。つまり、普通の「実質賃金」はプラスだといえる。

 しかし、しばしば報道等で紹介されている「実質賃金」は、厚労省が毎月勤労統計で公表しているものだ。ここでは「帰属家賃を除く総合」が物価指数として用いられている。

 帰属家賃は上昇率がほぼゼロであるため、これを除くことで物価上昇率が高くカウントされている。日銀が物価の見通しに用いる「生鮮食品を除く総合」の値と比べても最近では0.5%程度高い値となる傾向がある。

 1970年より前は、日本の消費者物価指数に帰属家賃は入っていなかった。しかし、持ち家比率は各国によって違うので、消費者物価の上昇率を国際的に比較するために、日本も帰属家賃を含む消費者物価指数に変更した。

 他方、厚労省は、従来から実質賃金を旧来の消費者物価指数に基づいて計算していたため、継続性という観点から、この段階で消費者物価指数から帰属家賃を除くインフレ率を使って現在に至っている。ちなみに、経済分析においては、各国とも帰属家賃を含めてインフレ率を計算するのが普通である。

 米国、英国、ドイツいずれも、直近(2023年など)の実質賃金の上昇率のプラス化を見ると、消費者物価上昇率の低下が先行する形で実現している。

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