CX Experts

品ぞろえが多いと逆にストレス……? 生活者の買物欲を刺激する「20のツボ」(3/3 ページ)

» 2024年06月19日 10時30分 公開
前のページへ 1|2|3       

生活者が「今」、重要視する買物の“ツボ”とは

――では、実際に今の生活者の「良い買物体験」につながりやすい“ツボ”はどのようなものなのでしょうか。

瀧本: 小売流通企業のバイヤーの方に、今の生活者にとってどんな買物が“良い買物”なのかインタビューしたところ、「ネガティブなことがなく、期待値に対して納得ができること」というご意見をいただきました。

河野: 生活者に対するインタビューでも似たような話があります。極端な例かもしれませんが、選ぶことにストレスを感じている方は「あらゆるものをサブスク化したい」とまで仰っていてとても印象的でした。

飯島: 決まったものを毎回選ぶのは生活者にとって悩みも大きいのかもしれません。実は定量調査からも、それを支持するような結果が得られているんです。

 「食品・飲料」と「家電・電化製品」の買物において、生活者が重要だと思う要素の上位20項目を見てみると(下図)、「BOOST」タイプのツボに関わる要素よりも、「KEEP」タイプのツボに関わる要素が数多くランクインしていることが分かります。この傾向は「化粧品」「トイレタリー・日用品」など他のカテゴリーやチャネルでも共通しており、生活者の“ネガティブを回避したい”気持ちがうかがえます。

買物において重要/買いたい気持ちを高める上位20項目の分類

――今の生活者は「KEEP」タイプのツボを重視しているんですね。「KEEP」タイプのツボには、例えばどのようなものがあるのでしょうか。

瀧本: 今回は代表例として「損失回避」「フリクションレス」を取り上げたいと思います。

 損失回避は「選択肢が絞られており、失敗しづらい」「商品を高値掴(つか)みしない、損しない」といった要素から構成されます。これは、EC通販でどこでも商品を買えるようになり便利にはなったが、いざ届いた商品をみたら失敗していた――という苦い経験から、生活者から強いニーズが発生しているのではないでしょうか。

河野: 失敗回避策も非常に巧妙化しています。ポジティブな口コミだけでなくネガティブな口コミを見ることで、そこに自分が納得できるかどうか? という部分まで判断しているケースもあるようです。

飯島: 「フリクションレス」は、なるべく手間を減らしたいという生活者のニーズを押さえたツボです。例えば、希望の支払い方法でスムーズに買物ができたり、決まったものを買うときにわざわざ選ぶ手間がなかったりすることです。テクノロジーで便利になってきているからこそ、買物の際にストレスを感じると、途端に買いたい気持ちがなくなることがあります。

河野: 生活者の声でも、普段行かないお店に行ったら品ぞろえがすごく良くて逆にストレスだった。そんな声が見られます。本来ポジティブなはずの品ぞろえの良ささえ、状況によってはストレスにつながりうるのです。

瀧本: 今の生活者の声を見ると、いかに買物欲を逃さないような買物体験を設計するかが非常に重要であると感じました。

飯島: 今回は「KEEP」タイプのツボの重要性についてお話しました。ここまでの内容を見ていても、ストレスフリーな買物体験だけを志向していくだけでは、買物が楽しくなくなりそうです。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR