AIカカクの設計に当たり、ポイントとなったのがこれまで従業員の経験と勘に頼っていた値引き作業の標準化をどのように実現するかだった。
商品の売れ行きはさまざまな要因で変動するので、これまでの販売実績や天候、客数といった膨大なデータが必要となる。そこで、それらを解析し、あらゆる条件下でも「使える」ものにしていった。大瀧氏は「商品の値引き精度を高めるため、どのように大量のデータを活用するか。特に苦労したのはこの点です」と話す。
現在、AIカカクはイオンリテールが運営する約380店舗で導入され、約1200品目の値引きに活用されている。導入した店舗では、ロス率が1割以上低減しているそうだ。
また、AIによる値引き率がいつも高く提示される商品は、売れにくい商品だということが客観的に可視化された。その結果、商品の製造数を減らしたり、品ぞろえを見直したりといった改善がよりスムーズに行えるようになったという。
当初の想定以上に変化があったのが、従業員の心理的な負担軽減だ。「部門長のように熟練した人であれば、これまでの経験や勘から適切な値引き率を導き出せます。そのため、値引き後の売れ残りも少ないのです」(大瀧氏)
しかし、まだ慣れていない従業員やうまく商品を売り切ることができない従業員にとって、値引き業務は心理的な負担が大きい。適切な値引き率を設定できず、「値引きすぎる」「値引きしなさすぎる」といった状況が発生したり、その日の状況に合わない値引き率を設定したことで売り切れない=ロスを出すことになったりするからだ。
しかし、AIカカクを導入すれば適切な値引き率が分かり、迷ったり悩んだりすることが少なくなる。「AIカカク導入により、値引き業務に慣れていない従業員や苦手意識がある従業員も安心して作業できるようになりました」(大瀧氏)。AIカカクは業務効率化だけでなく、従業員の働きやすさも改善しているようだ。
現在、AIカカクは総菜と一部の日配品、生鮮部門(畜産と水産)に導入されている。今後は、シーズン商品である衣料品の分野でも活用を検討しているそうだ。大瀧氏は「衣料品でも仕入れたものが無駄にならないように、最適なタイミングや値引き率を出せるようにしていきたい」と話した。
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