「会社のために」なんて言わないで! サイボウズ青野社長に聞く、働きやすい会社の作り方

» 2024年07月05日 15時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 「会社のために」なんて言わないで!――――従業員体験の話題にからめてこう話すのは、サイボウズの青野慶久社長だ。創業27年目になり、長年同社を引っ張ってきた青野さんがこんなメッセージを伝えるのはなぜだろうか。

 サイボウズは「働きやすい会社」というイメージが強いが、ここまで試行錯誤の連続だったという。青野さんは、ITmedia主催の無料オンラインイベント「デジタル戦略EXPO」(2024年7月9〜28日)の基調講演で従業員体験の向上につながった工夫や考え方の数々を披露。本記事でその一部をお届けする。

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「企業が求めるもの」は存在しない なぜなら……

――働きやすさを考える上で、企業側の視点も知りたいです。そもそも企業は従業員に何を求めているのでしょうか。

青野さん いきなり変化球で答えますが、企業が求めるものというのは存在しないと考えています。なぜなら「企業という人」はいないからです! サイボウズ社内では「会社さんはいない」と表現しています。そこにいるのは青野慶久であり、一人一人の従業員であって、みんなが集まっていろいろなことを求めているのが企業です。企業が求めるものという言い方をしないことが大切です。

――「法人」という言葉があるので、つい企業という主体として考えてしまいます。

青野さん 私も一人の従業員です。良い製品を作りたい人、プライベートを大事にしたい人、会社を大きくしたい人、技術を磨きたい人など人それぞれです。私は「100人100通り」と表現しています。一様に扱わず、それぞれの思いがあることを前提にするというのがサイボウズの基本的な考え方です。

――企業というのはあくまでも個々の従業員が集まっているということなのですね。

青野さん そうなんです。だから「会社のために」なんて言うなと! 信頼できる人のために、お客さんのために、パートナーのために働いてください。会社のためではなく、誰かのために働いてほしいと強く伝えたいです。

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社員旅行に「意味ある?」の意見も 100人100通りの声を聞く

――100人100通りという考え方で取り組んだ事例を教えてください。従業員に喜ばれたことやうまくいかず軌道修正したことなどはありますか。

青野さん たくさんあります! 例えばサイボウズの従業員が100人以上に増えて成長軌道に乗ったころ、一体感を持つために社員旅行を企画しました。みんなで行き先を議論して1回目を実施した後、翌年の2回目を検討すると「私はここに行きたい」「海外は厳しい」「近場のレストランでもいい」などいろいろな意見が出ました。中には「意味あるんですか?」という声もありました。

 社員旅行に行けば一体感が高まるという固定観念にとらわれてはだめだと気が付きました。形式だけ残っても楽しくない社員旅行が続いてしまう可能性があるので、繰り返し改善しています。

――ちなみに、2回目以降の社員旅行はどうなったのでしょうか。

青野さん 2回目以降は選択制になりました。今はやりたい人が企画をして稟議(りんぎ)が通れば行くという形式になっています。当初の社員旅行から考えると不思議な感じですよね(笑)。これも変わるかもしれません。



 サイボウズは100人100通りという考え方でさまざまな取り組みを行い、今日に至っている。青野さんは講演の中で、社内コミュニケーションの工夫やハイブリッドワークにおけるオフィスの活用方法など実際の施策やアイデアを紹介してくれた

 さらに離職率が28%に達した創業8年目を振り返りながら、働きやすい会社にするまでの試行錯誤とビジネスパーソンへのメッセージを語った。青野さんの知見が詰まった講演をチェックしてほしい


サイボウズ青野社長が語る「働きやすい会社」の作り方

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