離職率28%からの逆転劇 サイボウズが歩んだ“働きやすい会社”への道「毎週のように送別会をしていた」

» 2024年07月10日 17時55分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 「2005年に離職率が28%になりました。ここまで従業員が辞めると、会社を維持することが大変になります」――こう当時を振り返るのは、サイボウズの青野慶久社長だ。サイボウズといえば働きやすい会社というイメージが強いが、最初から順風満帆だったわけではない。

photo サイボウズの青野慶久社長

 離職率の上昇を前にした青野さんは、従業員に本気で向き合って生の声を聞き、さまざまな改革を実行した。その結果、Great Place To Work Institute Japanが毎年発表する「働きがいのある会社」に2014年から8年連続で選出されるまでになった。

 サイボウズはどのようにして働きやすい会社に進化したのか。ITmedia主催の無料オンラインイベント「デジタル戦略EXPO」(7月9〜28日)の基調講演に登壇した青野さんが、従業員体験の向上につながった工夫や考え方を披露した。その一部をお届けする。

離職率が28%に 「毎週のように送別会をしていた」

 1997年創業のサイボウズは当初、目指すビジョンに向かって獅子奮迅するITベンチャーだった。「今日も徹夜だ!」というノリだったと青野さんは話す。しかし離職率が高いという現実的な問題にぶつかってしまう。

 「人が辞めると心が痛むんです。『御社で頑張ります!』と入社した仲間が、2年後くらいに『すみません次に行きます』と言いながら辞めていきました。毎週のように送別会をしているとメンタルが辛くなってくるんです」(青野さん)

 退職者が出る度に、新たな人材の採用と教育が必要になる。離職対策が喫緊の課題だった。そこで青野さんは、従業員の声に耳を傾けることにした。

 「それまではガツガツ働いてたくさん給料をもらえればいいのだろうと思っていました。しかし話を聞いてみると、どうも違うらしいぞと分かりました。一人一人の声を拾ってみると、それぞれ言うことが異なりました 」(青野さん)

 たくさん働きたい人、ワークライフバランスを重視したい人、働く場所を選びたい人、自分が希望する仕事がしたい人などいろいろな声が集まった。

photo ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏に登壇した青野さん

わがままを聞いたとき、会社が回るのか?

 従業員の声を聞いた青野さんはできるところから改革を実施。働く場所や時間を選択できるようにしたり、職種を選べるようにしたり、育休を最大6年間取得できるようにしたりとさまざまな取り組みを進めた。その結果、離職率がだんだん低下していった。

 人手不足の今、魅力的な会社作りは企業が生き残るための必須条件になると青野さんは話す。そのためには「自分の夢がここだったらかなえられる」と思える職場を作ることが大切で、第一歩目は従業員がわがままを言えるようにすることが肝心だと青野さんはアドバイスする。

 「残る問題は、みんなのわがままを聞いたときに会社がきちんと回るのかどうかです。2005年当時から15年以上たった今でも実験を続けているところです」(青野さん)

 青野さんはイベント基調講演の中で、サイボウズ社内で取り組んできた改革や工夫を教えてくれた。わがままを言える文化の作り方から社内コミュニケーションのコツまで多岐にわたる。これまで積み重ねてきた試行錯誤と知見が詰まった青野さんの講演をチェックしてほしい。

サイボウズ青野社長が語る「働きやすい会社」の作り方

DXやコロナ禍を経てコミュニケーションの形も働き方もガラリと変わった今、“理想的な職場”を実現するカギは何か――サイボウズの青野慶久社長が登壇したイベント「ITmedia デジタル戦略EXPO」をこちらから無料でご視聴いただけます

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