今期2025年5月期の通期業績見通しとしては、売上高は前年同期比27〜30%増を見込んでいる。これは前期の成長率32.8%には及ばないものの、高成長が継続する形だ。また調整後営業利益率が最大で10%に達する可能性を示唆しており、前期の5.0%から大幅に改善する。収益性向上への取り組みが結実しつつあることを示している。
セグメント別では、主力のSansan/Bill One事業が引き続き成長をけん引する。特筆すべきは、成熟期に入りつつあると見られていた「Sansan」の成長率が、前期の15.6%から16〜17%へと加速する見通しであることだ。橋本CFOは「2024年5月期第4四半期の受注金額が過去最高を記録した」と説明しており、主力事業の勢いが増している。
約1年前に実施した事業部制への移行による営業体制の変更による好影響も背景にある。橋本CFOは「事業部体制に戻したことは非常に良かった」と評価し、「個別の専門的な人員が個別のプロダクトを売ることで、お客さまへの価値訴求がしやすくなった」とした。
「Bill One」については、60〜70%という高い成長率を維持する見込みだ。当期の155.5%からは鈍化するものの、引き続き全社の成長をけん引する役割を果たす。
このたび2027年5月期にかけての中期財務方針も発表した。この3年間の年平均成長率(CAGR)として2〜27%を目指すとしており、2027年5月期の連結売上高は615億1800万〜693億9600万円を見込んでいる。
調整後営業利益については、売上高成長に必要な投資を行いながらも、これまで以上のスピードで成長させる方針を示した。2027年5月期における調整後営業利益率は18〜23%を目指すとしており、金額でいえば110億〜159億円規模となる。
橋本CFOは、この新たな中期財務方針について「引き続き、売上高成長率を最重要視した事業運営を行っていくことに変わりはないが、事業規模が大きくなり、利益創出の確度が増したことから、十分に利益率を拡大させていく土台が整った」と話した。
さらに長期的な利益率については「事業の成長率が市場平均並みとなった際には、少なくとも30%以上の利益率が達成できる」と考えていると述べた。
株主還元の一環として自己株式の取得も行う。取得する株式の上限を20万株(自己株式除く発行済株式総数に対して0.16%)、株式の取得価額の総額の上限を3億円とする。昨年発行した社員向けのストックオプションによる株式希薄化分を、この3億円でカバーできる見込みだ。
「今後利益が出てくる確度が相当程度高まっている。そういう中で、ミニマムでも株主還元を始めようということで、3億円という金額を設定した」(橋本氏)
今後の株主還元方針については、「まだまだ売り上げの成長、事業の成長を最重要視していることに変わらないので、還元比率を定めるところまでは行っていない」としながらも、「中長期的には還元比率などもしっかり意識したい」との考えを示した。
2027年5月期までの中期財務方針で示された年平均成長率22〜27%という野心的な目標は、同社の成長への自信を表している。また、高成長を維持しながら収益性の向上も視野に入れた次の成長ステージに移行しつつある。そして初の自己株式取得の決定は、Sansanが成長投資を継続しつつ株主還元にも着手する新たな局面に入ったことを意味している。
シンプル・イズ・ベスト Sansanがたどり着いたインサイドセールスの最適解とは?
案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか
【徹底解説】インサイドセールスの「9割」をAIとツールで完結する方法
「THE MODEL型」の弊害はAI活用にも 米国の営業組織が重要視する「RevOps」とは
窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング