さまざまな経験を重ね、2024年3月からは海外研修生としてタイのバンコクに赴任。1年を期限として、自動車産業を中心としたASEAN地域の製造業顧客向けのアカウント営業を担当し、DXソリューションやコンサルティングサービスの提案などを行う。この海外赴任は、入社前から考えていたキャリアプランの一つだった。
「日本の製造業がどう生き残り、拡大していくかに対して興味関心を持っていたので、海外での実際の状況を見る必要があると認識していました」
タイを選んだ理由はアジア圏の中で中国を除いてタイが製造業、特に自動車産業が非常に発展していること、ASEAN地域におけるマザー工場やメイン工場が多いこと、そして日立制作所としても、ASEAN地域における顧客との「協創」を加速する重要拠点としてタイを認識していることが挙げられた。
そして実際に海外に身を置き、日本の製造業、特に自動車産業の課題を肌で感じているという。「自動車のEV化の影響が大きく、中国企業との激しい競争にさらされています。中国企業は利益を削ってでもシェアを獲得しようとしており、そのアグレッシブな姿勢の前に、日本企業のシェアが徐々に奪われている状況を目の当たりにしています」
こうした状況に対して阪本さんは、周囲の意見も踏まえ「現時点では、EVの将来像が不透明な中で、最低限の自己変革を粛々と進めていくしかありません。技術的に出遅れないよう、今後ブラッシュアップすべきポイントを見極めて支援していくことが重要」だと話す。
その上で、具体的にできることは「お客さまと議論を重ね、さまざまな案件を粛々と進めていくことが現時点でできる最低限のこと。泥臭い作業ですが、それを続けていくしかないと思っています」と力を込める。
阪本さんは「海外研修生の期間で得た経験を生かし、日本側からの投資や支援、東南アジアへの注力を呼び込めるような材料を持ち帰り、日本と東南アジアをつなぐ橋渡しの役割を担いたい」と話す。
「1年という期間では、具体的な成果を出すのは難しいかもしれません。しかし、東南アジア市場の重要性を国内に伝え、増員や新たな取り組みを推進してもらえるよう説得力のある材料を持って帰国したいと思っています」
こうした思いの背景には、日本企業の東南アジアに対する興味が薄れていることへの懸念がある。「東南アジアはもっと伸びていくマーケットなので、きちんと投資すべきです。日立としてどのような価値を提供できるのか、しっかりと日本側に説明し、さまざまな支援やプッシュをしてもらえるような材料と説得力を持った状態で帰りたい」と意気込む。
日本は「ものづくり大国」として世界で名をあげたが、今やその栄光は輝かしさを失いつつある。製造業を巡る現状は、社会情勢やテクノロジーなど複数要因が混ざりあい、濁流のように目まぐるしく変化している。しかし、その流れの激しい川に足を踏み入れなけば、敗北は免れない。賽はすでに投げられているのだ。
20代という若さで、国内外の製造業の最前線で活動する阪本さん。その経験と洞察は、日本の製造業の未来を考える上で貴重な示唆を与えてくれるのではないだろうか。
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