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「勝てるオープンイノベーション」を作るには? 金融領域がアツい理由は「深層心理」にありデータが生み出す新ビジネス(1)(2/3 ページ)

» 2024年08月27日 07時00分 公開

どのような勝ち筋があるのか? 自社を深く理解する必要性

 また、新規事業を考える際に、自社がこれまで特化してきた領域、技術、人材などを活用することを忘れてはいけません。「どのような勝ち筋があるのか」に関しては、この点をよく理解したうえで+αを突き詰めた先にあるものです。

 一方、よくあるアプローチとしてアントレプレナーシップ(起業家精神)の高い外部の方を招聘(しょうへい)し、自社の出島として検討する企業もあります。

 飛躍的な打ち手としては非常に野心のあるやり方だと思います。しかし、自社カルチャーの理解、強みを生かすという検討においては、自社で今まで一緒に働いてきた人材を新規事業開発職として転換することが「自社の新規事業を発展」させるための土台作りに一番有効な手段といえるでしょう。

 既存事業と新規事業が一見異なる戦い方に見えても、社内外の環境や関係性が目まぐるしく変化する時代であるからこそ、経営層から現場までが連動しながら常に理解しあえる関係性が土台にあるというのは、実はとても得難い強みです。

画像提供:ゲッティイメージズ

金融事業に注目するワケ カギは「深層心理」

 こうしたオープンイノベーショを進める際、自社の強みをどの領域で発揮するかが非常に重要なポイントです。

 正解がある問いではありませんが、筆者の経営する企業も事業を展開する金融領域の魅力について、つまり「なぜ“今”金融なのか?」という問いについて考えてみます。

 産業を俯瞰(ふかん)して見渡した際に、個人を最終消費者とするD2Cの事業の中で、公共サービスと位置付けられる事業(金融、交通などインフラ系)は求められる安定性や高いサービスクオリティ、顧客保護、それを実現するための各種規制があります。そのため、インターネットを主戦場とするサービス事業者などと比較すると、これまで変革のスピードは緩やかでした。

 しかしコロナをきっかけに、非対面機会が増大し、Fintech産業の勃興が進みました。銀行、証券、保険、決済において顧客接点や業務プロセスのデジタル化が非常に速いスピードで展開されているのが、“今”金融事業に着目すべき大きな要因の一つといえます。

 また、金融事業は刹那的な価値を与えるモノやサービスではなく、フローとストックの概念を持つため、無形で持続的な他のサービスやプロダクトと組み合わせることで新たな価値を生み出すことが可能です。

 金融と既存ビジネスの融合で生成される重要なものとして「データ」があります。特に、現代のデジタルマーケティングにおいては、データの「鮮度」が非常に重要視されます。顧客との接点が増えるほど、企業が持つデータは新鮮さを保ち、より厳密な意思決定を下すことが可能となります。その結果、事業が飛躍的に成長するきっかけとなり得ます。

 金融商品との連携は、自社サービスに送客することで得られる具体的な利益や、顧客満足度の向上といった直接的なメリットを生むだけでなく新たなデータを蓄積させ、有用な「資源」となり、重要な役割を果たすのです。

 金融商品で得られるデータには顧客の行動パターンや嗜好、ライフステージなど、顧客の深層心理を理解できるものが多く、それぞれの顧客に自社サービスを含めた、最適なサービスを提供することが可能となります。これは顧客満足度の向上だけではなく、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。

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