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「勝てるオープンイノベーション」を作るには? 金融領域がアツい理由は「深層心理」にありデータが生み出す新ビジネス(1)(1/3 ページ)

» 2024年08月27日 07時00分 公開

 近年、超高齢化社会や労働人口の減少、多様化する価値観など、社会環境の変容を身近に感じることが増えてきました。企業を取り巻く環境も少なからずその影響を受けており、市場の先行きや人材確保など、事業の拡大を目指す上での課題が多方面で増えています。

 従来の製品やサービスの改善を繰り返すアクションだけでは、自社の事業、組織、働く人材のどの側面においても、これまでのような成長を見込めません。こうした環境の中、自社の成長という課題解決のため、一層のデジタル化と顧客ニーズの多様化への対応が必要になってきていると感じます。

 そのような状況下で、自社の成長を促進する取り組みとして想起しやすいのがオープンイノベーションではないでしょうか。オープンイノベーションとは、企業の内外を問わず広範なアイデアや技術を活用し、新規事業を創出することを指します。これにより、企業は自社内の知識やテクノロジーだけでなく、パートナーシップや協業、外部の技術の活用によって、より早く効果的に新たなビジネスを生み出せます。

 その際に、自社が持つ貴重なアセットを理解し、強みを定義しておくことは、オープンイノベーションを成功させる上で必要不可欠な要素です。

 “Where to play, How to win.(どこで戦うべきか、そこでどのように勝つべきか)”は事業開発を行う際の問答としてよく使うワードですが、事業会社の中で新規事業を推進する際に最終的に問われることは 「なぜその事業を自社が行うのか?」「どのような勝ち筋があるのか?」の2つの観点です。その答えを社内外に説得するための材料をきちんと考えることが重要です。

なぜその事業を自社が行うのか? 意外と見落としがちなポイントも

 出発点として、その新規事業が自社のミッションやビジョンの実現にどのように寄与するかを、明確に言語化して共通認識を作っておくことが大切だと考えます。

 意外と見落としがちですが、新規事業は、社員を含むステークホルダーの働きがいや価値観と合致していると示すことが非常に大切で、人材の評価や昇進時期はもちろん、日々の連携や承認プロセスなどあらゆる場面で常に影響してきます。

 そのような影響の源は企業カルチャーと言い換えられると思いますが、それは何に由来するかというと、企業の歴史や独自の成功・失敗体験などの要素以上に、会社を取り巻くステークホルダーの期待を抜きには語れません。

 各ステークホルダーが企業に期待するのはもちろん持続的な成長ですが、その際の戦略や戦術にも深く関心を持っています。業界やその中のポジションなどを踏まえ、その期待の本質を理解し、企業の成長のシナリオ上に新規事業の価値向上をどのようにマッピングしていくのか、という戦略性が必要です。

 自社が有する独自のアセットを活用しつつ、新規事業へ進出することは自社の事業ポートフォリオを広げることにつながります。従来の事業とは異なるユーザーや市場に対応するための機会を創出し、マーケットの拡大を目指すこと。加えて、競争優位性を増し、差別化を図り、より深くユーザーとのエンゲージメントを実現すること。これにより、従来の事業の長期安定的な収益の機会とシナジーを作ることがベストシナリオとしても考えられるでしょう。

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