最近のすき家は、店内での使い捨て容器による提供が話題となった。近未来感やSF映画を思い起こさせるのか、SNSでは“ディストピア容器”と呼ばれている。ゼンショーHDによると2022年から都内のセルフ式店舗で提供を始めたという。SNSでは「衛生的に良い」という高評価もある一方、やはり簡素さに対する批判的な意見も多い。
話題を呼んだディストピア容器だが、人手不足に苦しむすき家にとって避けられない施策だったのだろう。牛丼店ではこびりついた米を取るために皿を1枚ずつ「浸漬槽」に浸しておく必要があり、皿洗いは重労働だ。同工程の自動化は未だに進んでいない。
前述の八丁堀店もディストピア容器で提供していたが、つゆが容器に染み込むことがなく、いつも通り食事できた。重いどんぶりでかき込みたい気持ちもあるが、特に不便は感じなかった。
ファストフード業態のマクドナルドは昔から店内でも使い捨ての包み紙や紙容器で提供していたわけで、使い捨て容器自体は珍しいものではない。しかし、すき家の容器がディストピアと評されたのは、牛丼=和食という認識があり、ご飯ものをちゃんとした丼ぶり容器で食べたい願望があるからだろう。
そもそもファストフードの牛丼業態で、面倒な皿洗いを継続してきたこと自体、無理があったといえる。現在のマクドナルドに皿洗い業務を追加した場合の混乱を想像してみれば、そのハードさは理解できるはずだ。
近年におけるすき家の効率化施策をまとめると、セミセルフレジやタッチパネルの導入、そして券売機&セルフ式店舗の展開と使い捨て容器による提供がある。当初、券売機を導入するつもりはなかったというが、現在では導入が進み、競合の松屋に近付いている。前述の通り、対面にこだわる吉野家もタッチパネルを導入しており、3社による競争が激化するなかで、効率化の正解例がいくつもあるわけもなく、今後は3社とも同じような業態に収束する可能性もある。
マクドナルドのように、海外のファストフードチェーンでは券売機による注文・決済→使い捨て容器での提供という流れが一般的だ。対面での接客やお皿での提供にこだわってきた国内の牛丼業態だが、価格的にはファストフードと同じである。効率化が進むほどマクドナルドと同じ仕組みになっていくのではないだろうか。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた
券売機を置かないすき家が下した「セミセルフレジ」という決断Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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