すき家独自の施策でいえば、タッチパネル注文が挙げられる。競合では、対面にこだわる吉野家は、店員が注文を取る昔ながらの方式にこだわり、松屋はほぼ全店舗に券売機を導入している。タッチパネルはすき家の各席に設置してあり、商品を写真付きで見られるため、客はメニューから選ぶように注文できる。できた料理は店員が各席まで運ぶ。
松屋のような券売機方式にしなかったのは、すき家が主力とする郊外店の事情がある。都市部の駅前に出店することが多い松屋・吉野家に対し、すき家は郊外におけるロードサイド店舗の比率が高い。ロードサイド店のメインであるファミリー層は、メニューを見ながら雑談を楽しむ光景が見られるため、ファミリー層の満足度を下げないよう券売機を避けたという。
確かに子連れが券売機を使うとなると、高い位置にあるパネルは子どもから見えにくい。選ぶ時間もかかるため、入口で行列が発生しそうだ。タッチパネル方式はすき家の立地と客層にあった方式といえるだろう。
一方、最近では松屋と同じような券売機&セルフサービス方式を導入している。都内を中心に、改装店舗で同方式の導入が進んでいるのだ。
こうした店舗の自動ドアには「セルフサービス」と書いてあり、同タイプの店舗は松屋と同様に、入口付近の券売機で券を購入するシステムになっている。従来店のように店員が料理を運ぶのではなく、番号を呼ばれた客が取りに行く手順なのも特徴だ。食後は客が返却口に食器を返すため、基本的に店員がホールに出てくることはない。
セルフ方式を導入している八丁堀四丁目店(東京都中央区)を訪れた。所感として、通常のすき家の1.5〜2倍程度の広さがあり、席数も多い。何より提供までのスピードが早い点が印象的であった。牛丼(並盛)を券売機で購入すると、わずか1分後に呼び出されたのである。昼下がりで客が少ない時間帯ということもあるが、外国人とみられる2人の店員は他の店舗よりゆったりと働いている印象を受けた。最低限のオペレーションで済むため、通常店よりも働きやすいのではないだろうか。
前述の通り、これまでは券売機を避けていたすき家だが、人手不足やコスト高が進む昨今、セルフ式の導入は避けられなかったのだろう。対面での注文にこだわる吉野家も現時点で券売機には及び腰だが、一部店舗でタッチパネルの導入が進んでいる。
なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた
券売機を置かないすき家が下した「セミセルフレジ」という決断Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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