謎の百貨店「ボンベルタ」が、イオンリテールの新業態「そよら」に遺したものとは?後編(1/3 ページ)

» 2024年08月30日 08時00分 公開

 2024年2月28日、33年間の歴史にひっそりと幕を下ろした千葉県成田市の百貨店「ボンベルタ」。流通大手、イオングループが手掛けるものの、全国的知名度は皆無に等しく、千葉県民でも知る人ぞ知る存在だった。

 そんなボンベルタはいま、イオンリテールの新業態「そよら」の旗艦店として、新たな道を歩み始めている。

 元々そよらは半径2キロ圏内の足元商圏に特化した都市型SC(ショッピングセンター)として、2020年から展開するが、ボンベルタを業態転換した「そよら成田ニュータウン」は、従来のそよらにはない、広域商圏型といえる専門店を多数導入するなど、大型化が特徴となっている。

 密かに姿を消したボンベルタが、新業態「そよら」旗艦店に遺したものとは――。

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ファミリー層を取り込めなかった「ボンベルタ」

 ボンベルタ成田が「そよら」に転換するに至った要因として、成田ニュータウンという商環境の変化が挙げられる。

 成田市は東京都心部と直結する良好な交通アクセスや国家戦略特区認定による規制緩和を背景に一貫して人口増加傾向にある。成田ニュータウン(敷地面積487ヘクタール)に限れば、2010年に人口減少傾向に転じたもの、造成の契機となった成田国際空港関係者を中心にファミリー層(30〜40代)の流入も続いており、ニュータウンという単語と切っても切り離せない高齢化・老朽化・限界集落化というイメージとは一線を画す賑わいがみられている。

 成田市としても2029年3月運用開始予定の成田国際空港新滑走路や2030年以降のターミナル集約に先駆け、ボンベルタ周辺一帯で公共施設の集約を核とした「(仮称)赤坂センター地区複合施設整備事業」に取り組むなど、空港関係者による需要拡大を見据えた活性化の起爆剤を準備していた。

 ボンベルタの想定客層であった高齢層(50〜60代)は、成田市の人口動態を考慮しているとは言い難いものであり、持続可能な商業施設運営に「そよら」への転換という一手は不可欠だった。

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